第2話 理想の王子さまっ

文字数 955文字

 「そろそろバスに戻ろか」
 シン君のかけ声に、ハッと我に返る。
 「だね」「楽しかった〜」と女子たちも歩き出す。
 そうだ、わたしは理想の彼氏をゲットするために恋ステに参加したんだ!
 悪魔の誘惑にぽわんとなってる場合じゃないっ。
 ぶんぶんと頭をふって、シン君の背中を追う。
 シン君は高校生に大人気のティックトッカーで、女の子みたいにきれいな顔に、大阪弁。
 スマホで見ていたシン君とリアルで出会えるなんて、まさに恋ステ。
 そしてリアルのシン君は……かっこよくて、やさしくて、おもしろくて、何から何までパーフェクトだった。
 リュウの言う通り、わたしの好きな人はシン君。
 ま、恋ステの旅も3週目になる今日まで、ツーショどころかろくに話せてもいないけど。

 移動のバスでは、シン君の隣にはゆりちゃんが、リュウの隣にはまいちゃんが座った。
 まいちゃんは茶色の巻き髪にばっちりメイクで、いかにもギャルって感じ。
 明るくて楽しくて、「遊びじゃない恋」を求めて参加したって言ってた。
 ということは、遊びの恋は経験済みってことだよね……?
 すごいなあ。
 通路をへだてた2人席では、シン君とゆりちゃんが楽しそうに話している。
 ゆりちゃんは追加メンバーなのに、あっという間にシン君と仲良くなった。
「シンはだれが気になってるの?」
 ドキッ! ゆりちゃん、そんなこと聞いちゃうんだ!
 盗み聞きはいけないと思いつつ、耳をそば立てる。
「今は2人かな……」
 え!?
「ねえ、それって、第一印象の時と変わってる?」
「それ言ったら、ばれるわ」
 ドキドキドキドキ! 初めて会った日。
 わたしたちは、第一印象でだれがよかったかを、夕飯のバーベキューで教えあった。
 お肉をひっくり返しながら、シン君が照れくさそうに言ったのは……「野乃花ちゃん」。
 ドキューン! もう天地がひっくり返るくらい、うれしかった。
 だって理想の王子様が、わたしの名前を口にしたんだもの。
 でも、それはもう3週間前の話……。
 今のシン君の「気になる2人」はだれなんだろう?
 神様、お願いします!
 シン君の「気になる人」の中に、わたしも入っていますように!!
 そしてそして、あの超危険な悪魔からわたしをお守りください!
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