第98話 ミッドナイト・ストリートパフォーマンス【5】
文字数 962文字
「自分の人生を、生きているか?」
僕の軽いMCのあと、僕らの演奏が始まる。
打ち込みのドラムに、カケのベースが重なる。
その上を走るように僕がストロークしたオーヴァードライブのテレキャスターと口から紡ぐライム。
スポットを浴びながら、僕らは剥き出しのコンクリートのビル内に、音を響かせる。
持ち曲を二曲終えて、僕らのライブでの初ステージが終わった。
一瞬の間を置いてからの、拍手。
僕らは拍手に包まれながら、舞台から捌けた。
正直、この日のことを、僕はいまいちよく覚えていない。
帰り、終電に乗るために駅へ向かう途中、缶ビールを片手に、僕はカケと一緒に、満天の星空に叫んだ、ということくらいだ。
僕らならなんでもやれる。
そのときは、そんな気がしたんだ。
僕らはどこにだって飛べる気が、したのだ。
☆
「歴史を見てみなさい。苦難の時代ほど、〈ひと〉が輝きを帯びる。だから、大丈夫」
これは、僕がのちに聴講した大学の先生が、さらにその先生に言われた台詞だそうだ。
先生がこの国を憂い、尋ねたら、そう答えてくれたらしい。
ちなみに、その、先生の先生という方を、僕は偶然見かけたことがある。
良いひとそうだった。
だから、コーゲツからその方の著書を安値で買って、僕は何度も読み返した。
未だに、手元に置いてある本の一冊だ。
世の中、暗いニュースばかりだけども、こういうときに、ひとが輝きを帯びる。
そして、世界を変えていく。
僕は「子供の頃にも、将来の夢なんてなかったよ」とは言うが、でも、〈小説で世界は変えられる〉と信じてここまで人生を歩んできた人間だし、これからもその思いは変わらない。
輝きを帯びる存在の一人に、絶対になってやる、と思って、僕は今も生きている。
そんな人生を歩むためには、この小説で語る僕の冒険劇は、必要なプロセスだった。
成功と挫折。
演劇で成功を手にしたことはあったけど、僕は落ちぶれていき、今も這い上がるために、自分で起き上がるために、頑張っている。
そんな僕だからこそ、暗い時代にひとが帯びる輝きに、賭けているのかもしれない。
なにを賭ける?
決まっているだろ、そんなの僕の全人生だ。
ライブを終えたとき、僕は、上京してバンドをやろうと思ったのだった。
それは、必要なプロセスだったのだ、違いない。
〈了〉
僕の軽いMCのあと、僕らの演奏が始まる。
打ち込みのドラムに、カケのベースが重なる。
その上を走るように僕がストロークしたオーヴァードライブのテレキャスターと口から紡ぐライム。
スポットを浴びながら、僕らは剥き出しのコンクリートのビル内に、音を響かせる。
持ち曲を二曲終えて、僕らのライブでの初ステージが終わった。
一瞬の間を置いてからの、拍手。
僕らは拍手に包まれながら、舞台から捌けた。
正直、この日のことを、僕はいまいちよく覚えていない。
帰り、終電に乗るために駅へ向かう途中、缶ビールを片手に、僕はカケと一緒に、満天の星空に叫んだ、ということくらいだ。
僕らならなんでもやれる。
そのときは、そんな気がしたんだ。
僕らはどこにだって飛べる気が、したのだ。
☆
「歴史を見てみなさい。苦難の時代ほど、〈ひと〉が輝きを帯びる。だから、大丈夫」
これは、僕がのちに聴講した大学の先生が、さらにその先生に言われた台詞だそうだ。
先生がこの国を憂い、尋ねたら、そう答えてくれたらしい。
ちなみに、その、先生の先生という方を、僕は偶然見かけたことがある。
良いひとそうだった。
だから、コーゲツからその方の著書を安値で買って、僕は何度も読み返した。
未だに、手元に置いてある本の一冊だ。
世の中、暗いニュースばかりだけども、こういうときに、ひとが輝きを帯びる。
そして、世界を変えていく。
僕は「子供の頃にも、将来の夢なんてなかったよ」とは言うが、でも、〈小説で世界は変えられる〉と信じてここまで人生を歩んできた人間だし、これからもその思いは変わらない。
輝きを帯びる存在の一人に、絶対になってやる、と思って、僕は今も生きている。
そんな人生を歩むためには、この小説で語る僕の冒険劇は、必要なプロセスだった。
成功と挫折。
演劇で成功を手にしたことはあったけど、僕は落ちぶれていき、今も這い上がるために、自分で起き上がるために、頑張っている。
そんな僕だからこそ、暗い時代にひとが帯びる輝きに、賭けているのかもしれない。
なにを賭ける?
決まっているだろ、そんなの僕の全人生だ。
ライブを終えたとき、僕は、上京してバンドをやろうと思ったのだった。
それは、必要なプロセスだったのだ、違いない。
〈了〉