第二話・10分の1計画

文字数 677文字

✳10分の1計画その1✳
(その2が、あるかどうか)

 私が、いつものようにSRIで仕事をしていた時だ。同僚の渡辺が私に話し掛けてきた。

「沢田さん、最近チーフと仲悪いですね。
何かあったんですか?」

 彼は新聞を持っていた。
私はその一面の、10分の1計画起動の文字が気になった。何だろうと、頭を斜めに下げて文面を追っていたら

「何してんですか?」

と渡辺が、私に不思議そうな顔をして言った。
 私は、

「いや、何でもないよ」

と、どうとでも取れる返事をした。
 そうなのだ、あれからヤス子は私にコーヒーを淹れてくれない。別に困った事ではない。
自動販売機で、スーパーなバリスタコーヒーを買えば済むことだ。何と言う事はない。
独身貴族に死角なしだ、あはは。すると、

「いや〜、山口チーフは先輩に惚れてますからねぇ〜」

と後輩が言った。山口とはヤス子の名字だ。
えっ?皆知ってたの?
 私は恋愛に興味がない。だから気にもしてなかった。そうなのか・・・。
だが彼女は、私より年上では?
確か3つは上だった様な。
 どうせ独身貴族を辞めるなら。20代前半の可愛い娘が良いに決まっている。
別段女性にモテる訳でもないし。
街では女性を売っている、いかれた世界だ。
困る事など無い。
 だが、まさかヤス子が私に・・・。
私はアデリーが来た!の時の様に寒気がした。

 私は窓の外を何気に見てしまった。
すると、山口ヤス子チーフが私の所に般若の様な顔をして現れた。
私は室温が、更に3度下がった気がした。
そしてヤス子は、私に書類を突き付けると。

「社会科学研究所に出向です!
3か月行ってらっしゃい。これは命令です!」

と言った。
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