第16話 1991年正月
文字数 1,032文字
新学期が始まり、僕らはまた、学校に行き始めたが、ネコは相変わらず、急に驚くので学校には行けずにいた。
だからというわけではないが、引き続き美宇は学校が終わると先にネコの家で待っている生活が始まった。僕達が通ってくるだけでなく、カズヨも頻繁にネコの家に来るようになり、日暮れが早くなると、愛理姉さんと、玄馬さんが夕方にはやってきて、玄馬さんが僕たちを鎌倉の自宅近くまで送ってくれるようになった。
笑い声で賑やかになったのを、咲枝ママはとても嬉しがっていた。
【そして、冬休み…】
冬の小春日和は、ウッチャンズの部屋が暖かい。ひなたぼっこが好きなネコは、僕らがいてもTシャツにブラジャー、エプロンドレスのまま、ベッドの上でゴロゴロしている。
ネコは潤んだ瞳で見つめて、相手を動かす技や背中に寄り掛かり甘える技を持っている。
体のバランスが悪いので、どうしても片足に負担がかかるからなのか?すぐに、足が痛いと言って、足をさすってくれと、せがむネコ。
ネコの技を駆使されると、僕は文句をいいながらでも、いつまでもネコの素足をさすっていた。暖かな日差しの中、僕たちだけの世界で、笑顔があふれ自由にのびのびと呼吸をしていた。
そんなネコを僕はかわいいと思うが、それを美宇が真似をしてしょうがない。
「美宇、やめとけ」というが全く気に留めない。僕はそのたびに深くため息をつく。そんな日々を送っていた。
【そんな中、咲枝ママから】
ネコが九州から戻って初めての、クリスマスとお正月を楽しく過ごさせてあげたいので、十二月二十四日のクリスマスイブからお正月の三が日の間、泊まり込みで遊びに来てほしいと誘われた。
九州から戻って初めてのお正月ということは、事件があってから初めてのお正月という意味でもある。それは僕にもわかった。
僕達のお正月は日本でいう旧正月にあたる。日本のXmasも大晦日もお正月も僕らの両親は忙しい。なにより、お正月は鎌倉が初詣で混むのでどこにも行くことが出来ない。だから僕らは冬休みのほとんどを、家に閉じこもっている。
両親は迷ったようだったが、愛理姉さんが頻繁に様子を見に行くという約束で、両親は出してくれた。
愛理姉さんは、ネコの家で使えるようにと、ネコと僕と美宇の三人に色違いのお揃いのマグカップをクリスマスプレゼントしてくれた。
とても嬉しかった。きっとネコも美宇も同じだったと思う。
僕ら三人は、朝から寝るまでほとんどを一緒に過ごした。