第17話 ダグラスの第1の試練

文字数 1,579文字

 アリスからデートに誘われた武は、アリスに倉庫に連れてこられダグラス・ピーチと対峙している。
 ダグラス・ピーチは、ピーチ・ボーイズのリーダーとしてではなく、フィクサーとしてでもなく、アリスの父として武の前に立ちはだかる。
 二人の交際を認めるか否かを判断する3つの試練がスタートした。

「では、第1の試練のルールを説明しよう。この試練では腕力を試させてもらう。ただし、腕力と言っても腕相撲をしろとか、そういうものじゃない!」とダグラスは言った。

「へー」と武。

「女性を守るのに必要な戦闘能力を有しているかを判断するためのもの。だから、この試練は実戦形式だ!」

「具体的にどうやるの?」アリスは質問した。

「おい、アントニオ!」ダグラスがそう言うと、スキンヘッドの黒服がやってきた。

「このアントニオと戦ってもらう。アントニオに勝てば第1の試練はクリアだ。ちなみに、公平性を期すために、武器の使用は認めない。いいかな?」

「望むところよ! さあ、武。私のために戦うのよ!」

 気が進まない武。アリスに前に出るようにグイグイ押され、アントニオと対峙する。

「はじめ!」ダグラスの合図で第1の試練が始まった。

“シュ シュ シュ”

 ボクシング・スタイルのアントニオ。軽いフットワークで武の方に近づいてくる。ボクシング経験者か、ボクサー崩れなのだろう。
 武は仁王立ちのまま、ダグラスが言ったルールについて考察する。

―― 武器ナシって言ったよな?

 そうすると、このルールでは目に見える証拠を残すとダメなんだ。
 つまり、個体や液体を使用した攻撃は証拠が発見されてルール違反。

 そうすると・・・気体での攻撃はオッケーだな

 武は第1の試練の戦闘方法を理解した。

 アントニオは武との距離を一気に詰めて、軽くジャブを放った。武は難なくジャブをかわす。
 アントニオは武に避けられたことに驚いたものの、次はジャブ・ストレート・フックを混ぜたコンビネーション攻撃を放つ。このコンビネーションも武にかわされた。
 実際にはかわしているのではなく、武が生成した水素を使ってパンチの軌道を逸らしているだけなのだが、アントニオはそんなことは分からない。

 二度も少年にパンチをかわされてムキになったアントニオは、さらに武との距離を詰めてパンチを放った。その瞬間、武はアントニオのボディにパンチを放つと同時に一気に圧縮した水素を放出した。

 ボディにカウンターを食らったアントニオ。5メートルほど後方に吹っ飛ばされ、うずくまった。

 ダグラスがカウントを取り始めた。

「ワン、トゥー、スリー、フォー・・・」


―― もう立たないでくれ・・・

 倒れたアントニオを見つめる武。アントニオが立ち向かってきたら、さっき以上の攻撃を放たないといけない。ダグラスの手下とはいえ正々堂々と戦うアントニオに対して、武は人体に影響を及ぼす攻撃は避けたい。

 アントニオはふらつく足を抑えながら、立とうとしている。

「セブン、エイト・・・」

 アントニオはフラフラの足取りで立ち上がり、ファイティングポーズをとった。

 ダグラスが「ファイト!」と短く言い放つと同時に、アントニオは全速力で武に向かって走った。今までの戦いで実力差を悟ったのだろう。中途半端なテクニックを駆使しても武は勝てない。だから、アントニオはなりふり構わず突進してくる。

「ああ、しかたないか・・・」武はそう言うと、突進してくるアントニオに向かってパンチと圧縮した水素を放った。

 アントニオはさっきよりも大きく吹っ飛ばされて、完全に意識を失った。

 ダグラスは武の腕を上に上げて「勝者、武!」と宣言した。

「きゃー、たけしー」とアリスは叫んでいる。

―― だから、これなに?

 試練の途中でダグラスをぶっ飛ばそうか迷っている武。

 見事に第1の試練をクリアした武は第2の試練へと進むのであった・・・
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