セリフ詳細

 また、そもそも西洋ヨーロッパ世界と言えば、ベーコンデカルトを輩出し、人類が力で自然をコントロールする思想の発祥地であり、鬼頭秀一氏が著述されているように、キリスト教ストア派哲学の人間中心主義と、それに対抗する環境主義どの倫理学史を擁している。欧州における水政策のパラダイム転換にも、人間社会の利益を留保しつつ、河川生態系の存在価値を強調する思想が見られる。特に、氾濫原を「手付かずのvirginな景観」と表現する認識(生態学的な原生自然よりヨーロッパ固有のアイデンティティーという社会的ニュアンス)には、原生自然を讃美する環境主義的な価値観(日本同様ヨーロッパに原生自然はほとんど残っていなかったが、自然美に傾倒するロマン主義思想を生み、米大陸に渡って自然保護思想に受け継がれた)が含まれていると思われる。但し私は、この見解に若干の違和感を覚えた。氾濫原生態研究所が論じているように、氾濫原は林業の生産適地であり、実際に人為的な植林や林業が行われていた河畔林も存在する。歴史的経緯にもよるが、過去にヒトが何らかの形で関与していたのであれば、それは原生自然と言うより「里地」に近く、そのような環境を自然淘汰として放置するのが望ましいのか、地域に応じた柔軟な対応が必要であろう。

作品タイトル:ちがくぶ!地球研究会

エピソード名:水環境論 ヨーロッパの河川

作者名:スライダーの会  slider

62|科学|連載中|44話|274,160文字

短編, 青春, 高校生, エッセイ, シリアス, 一人称, 女主人公, 群像劇, 現代, 一話完結

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 東京 渋谷区の、とある私立学校に「地学(地球科学)部」という部活があり、私達の世界である地球(岩石圏・水圏・大気圏)と宇宙に関して、主に自然科学的な探究を行っていました。地学部の部室である「地学教材室」は理科館4階にあり、地学部で過ごした日々、ベランダから眺めた天地の景色は、部員だった私達の大切な思い出です。

 やがて卒業し、大学に進学するなどした私達は、地学部の理念を継承した活動を続けるべく、渋谷区や横浜市 青葉区の大学を拠点とするサークル「地球研究会」を結成しました。地球研究会は、地理学・地学などを中心に、私達が暮らし生きる世界を学び、その中に存在する自我を見詰める、総合的ネットワークです。

 現在は、ここ「NOVEL DAYS」に公式ウェブサイトを開設し、國學院大学・法政大学・星槎大学などの学生・卒業生らが参加し、論文や随筆を投稿しております。大学の課題レポートとして執筆した小論文も掲載しているので、学業の参考になるかも知れません。アイコン・イラストの登場人物はフィクションですが、本文で取り扱っているのは現実世界のテーマです。


【詳細】

 地球研究会は、國學院高等学校地学部を母体とし、その部長を務めた卒業生らによって、2007(平成十九)年に「地球研究機構 國學院大学地球研究会」として創立された。國學院大学においては、博物館見学や展示会、年2回(前期・後期)の会報誌制作など積極的な活動に尽力すると共に、従来の学生自治会を改革するべく、志を同じくする東方研究会・政治研究会と連合して「自由学生会議」を結成していた。

 主たる参加者が國學院大学を卒業・離籍した後も、法政大学や星槎大学など様々な舞台を踏破しながら、探究を継続している。ここ「NOVEL DAYS」では、同人サークル「スライダーの会」が、地球研究会の投稿アカウントを兼任している。