懐旧の星影
古より引き継がれし魔術が失われ、数百年の年月を経た後の時代―。
―慥かに怖れられたはずの存在は、今や架空のものとされ、囂々たる現代の世の中に、怒涛の如く過ぎる日常に掻き消されていた。
深い霧に包まれ残星が疎らに散る東雲。
朧に隠れ涼風を幾重にも纏う昼下がり。
紅掛に染まりゆく空に微かな夕星光る火点し頃。
瞑色から至極色へと移りゆく漆黒の宵闇。
刻々と移りゆく空模様には誰一人目をくれない。
それでも、時の摩耗に忘れ去られた“その”存在は、今も深い闇夜の中で息づいている。
封印された掟と過去の過ちに嘲笑われようとも。
失われゆく力と薄れゆく記憶に思いを馳せ罵られようとも。
例えそれが、過酷な運命を背負い歩んでいかねばならないのだとしても―。
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―これは、失われゆく今日と息づく明日の物語。