ワンダーランド歌舞伎町

作者 丸川丸

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ワンダーランド歌舞伎町       丸川丸

電気店の“わんだーらんど”は、新宿歌舞伎町に小さな店を構える電気屋だ。
新宿区役所通りを職安通りの方に歩いていき、バッティングセンターを越えた道を左に曲がりさらに進むとラブホテル街の真ん中にぽつんと存在する。

大きなラブホテルばかりが建ち並ぶ中に一軒だけ民家風の2階建ての家がある。
古い大きな看板が店の軒先にかかっているので電気屋だということは、誰の目にもすぐ判る。
その看板もかなり年代物で、某大手電機メーカーの旧いブランドだった
“PANASHIBA”の看板なので、ずいぶん年季の入った電気屋だと想像がつく。

その看板の年代どおり、戦後すぐに先代の店主が始めた電気屋の暖簾を現在の二代目の白沢紘一が経営している。
店員は、橋下鉄男というでかい身体をした若いのが一人いるだけだ。

歌舞伎町の真ん中で、しかもこんな小さな店構えで飯を食っていけるのか?
と、心配になるような雰囲気だが実は、かなり忙しく繁盛している。
はっきり言って、かなり儲けているといっても良いぐらいの売り上げがある。
独特の地域がら他の街にはない、特殊な顧客需要がふんだんにあり、しかも同業他社が存在しないので歌舞伎町では、ユニークな地位を築いている。

店主の白沢は、二代目経営者といいながら先代の田中誠とは、血縁でも何でもない。
では、どうして“わんだーらんど”の経営を引き継いだのか?
はたまた田中電気商会というありきたりの名前だった店をどうして“わんだーらんど”に変えたのか?
それは、おいおい説明して行くとして、物語としての“ワンダーランド歌舞伎町”を話して行こう。

この物語は、世界でも最大にして稀有な歌舞伎町という繁華街の中にうごめく変わった人物たち、これまたそれ以上に変わったドラマの数々である。

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