ビヨンド ザ クラウド ≒ アデュール スカイ

作者 倉澤 兎

[ファンタジー]

5

1,764

0件のファンレター

 物語は、月森シンスケが友の葬儀に出席した、帰路の飛行機の中で見た不思議な夢から始まる。それは、男が空爆の瓦礫の中から赤子を助けだすという夢であった。
 時代は1991年、月森シンスケは妻を亡くし、人生の黄昏を生きていた。黄昏と言うにはまだ早い。四十八歳の時であった。
 
 妻が亡くなり、三回忌の法要を済ませた春まだ浅い頃、福珠宗海という初老の男性が彼を訪ねてくる。その後、彼は突然夢を見始める。祖父が残した「Barber Chair」で眠ると夢を見るのだ。それもとてもリアルな夢だ。

 彼は夢の中で、1931年の台湾にタイムトリップしていた。そこで、祖父の月森鷹三と幼い頃の父の森一、そして雪姫という女学生に出会う。そして、福珠宗海を通して、祖父と父が、国姓爺と呼ばれた鄭成功の子孫と繋がり、中国、台湾で繰り広げられた「反清復明」と洪門と呼ばれる秘密組織との関わりがあったことが次第に解ってくる。

 そんな混乱した日常の中、馮炳文という男性が彼の前に現れ、自分の父親は「ツキモリ・シン」だと告げる。こんな不可解な出来事に翻弄されつつ、シンスケは、否応なしに、福珠家より月森家に託された「天目茶碗」とロザリオの謎を知ることになる。

さらに、彼は夢の中で出会ったシンリィという女性と恋に落ちる。しかし、シンリィとの恋の夢が覚めると、馮炳文と彼に関わる記憶は、シンスケ以外の人の記憶から消滅していた。

 そんな中、福珠宗海が急逝する。シンスケと養女の華に遺言ともいうべき手紙を残して。そこにはシンスケの出生の秘密が綴られていた。月森シンスケは、その手紙により、自らの家族と知らなかった父の過去を知ることになる。
月森シンスケは、この不思議な出来事を通して、次第に人生の黄昏から抜け出していく。

ビヨンド ザ クラウド ≒ アデュール スカイ。
人生はいろいろあるけど、”雲の向こうは、ほゞ 晴れている”――。

そう思いながら書いた作品です。

ファンレター

ファンレターはありません