結ばれることのなかった彼へ

[日記・個人ブログ]

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「2019年夏。本物の恋」
 2019年の夏、私は恋に落ちた。その恋は、私が望んで落ちたものではなく、なにより叶うことが許されない恋だった。
 しっかりとした歩みで、前を見て歩いていたはずなのに、落とし穴に落ちてしまったかのような、唐突で予期せぬものであった。その上、私は既婚者である。私が夫以外の人と関係を結ぶことは、制度上許されないし、世間も許さないはずだ。夫が知ったとしたら、きっと傷ついてしまうだろう。夫を傷つけてまで、その恋を成就させようとすることは、私にはできなかった。
 叶うことのない恋心を、自分の胸の中にだけに留めて日々を過ごしているうちに、恋心は育ち、私の胸を痛みつけ始めた。私にとって、その痛みは苦しく、それでいて心地よかった。私の胸を苦しめる時、恋心は現実とは異なる世界を自分に見せてくれた。まるで夢の中に、一瞬にして連れて行ってくれるようだった。世界が明るくきらめき美しく見えた。空気に含まれる様々な匂いを吸い込むだけで、私の心は踊った。
 季節が移り行くたびに、私は触れることのできない彼のことを思って、感傷に浸った。感傷に浸ると同時に、また世界は優しく私を包んだのだ。私はそのような日々の一瞬を切り取り、書き綴った。私の秘めた思いを、私の知らない誰かに知って欲しいのである。

ファンレター

一方通行の恋愛の結末は……

揺蕩うように綴られゆく思いの吐露が、いったいどこへとたどり着くのかと思いながら読んでいました。
綺麗な日本語。綺麗な描写。綺麗な季節の流れ。
思わずほう、と溜息をつきたくなるような文章にうっとりとなります。
特に波が起こるでなく、山場があるわけでもないこのゆらゆらとした話が最後に「コロナ」で締められるのは意外なようでもあり、自然なようでもあり。
恋はあるとき突然始まり、あるとき突然終わる。その心情の変化を起こしたきっかけが「コロナ」だったのだとすると、あるいはそこに人知を超えたものの采配があったようにも感じてしまいます。

次の作品も期待しています。

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