タイムリミットは17歳の誕生日
文字数 1,864文字
吸血鬼の悪役令嬢に転生した私。
ブラドフィリア公爵家ですくすくと成長し、あっという間に15歳。
来月にはヴァンダール王国立魔法学園に入学だ。
いよいよ『ロマファン』の舞台と接触することになる。
「シルフィラ、少しいいかな。大事な話がある」
そんなある日の夜、お父様が私を呼び出した。
ダンディーな公爵であるお父様は、私が赤ん坊だったときからちっとも歳を取らない。
お母様も同じく。
吸血鬼の一族はどうもそういう性質みたい。
嬉しい限りだ。
で、庭に呼び出された私はお父様に答える。
「どういたしました、お父様?」
自分でも背中が痒くなりそうな口調だけど仕方ない。
なにしろ今の私は公爵令嬢なのだ。
「うむ……お前も来月には魔法学園に入学。来年には十七歳だな」
「はい。ここまで育てていただいたお父様とお母様には感謝しかありません」
なんだろう。
娘が遠くに行ってしまうので、悲しくなったのかな。
実はこの人、けっこうな子煩悩だからな。
本人は隠せてるつもりらしいけど、娘は気づいてるんですよ。
でも、どうやら違うっぽい。
お父様は私を見ると、真剣な口調で言ってくる。
「これまでお前は、領民から集めた血を飲んで暮らしてきた。しかし、もうすぐそれでは足りなくなる」
「どういうことでしょうか?」
「人間から直に吸わないと、魔力が不足するようになってしまうのだ。人の身体から離れて時間が立てば立つほど魔力は発散してしまうからな」
そうなのか。
いろいろな書物を読みあさってきたが、そういう話はなかった。
吸血鬼に関する記述自体が少なかったから、一族の秘密として文字に残してないのかもしれない。
お父様は続ける。
「具体的には、十七歳の誕生日。それまでに眷属とすべき相手を見つけるのだ。そしてその者の血を直接吸う。そうしなければお前は死んでしまう。それが、我ら吸血鬼の一族に与えられた運命だ」
なんという無茶振りな運命!
いやたしかに、いつまでも若いままとか、食事をしなくていいとか、魔力が豊富とか、利点が多すぎるとは思っていた。
こんな種族が、どうしてもっとたくさんいて、逆に人間を支配していないんだろうくらいに感じてた。
けど、これなら納得だ。
「では……お父様もお母様とはそのように?」
「ああ、その通りだ」
私の問いにお父様は頷く。
「魔法学園で、彼女を見初めてプロポーズをした。そして生涯その血をもらい、我が眷属とする契約を結んだ」
「それは……その相手とは、必ず結ばれねばならないのでしょうか?」
「必ずしもそうと決められてはいない。だが、現代の多くの吸血鬼はそうしている」
なるほど……。
それはつまり、生涯を捧げてもらい、自分も生涯を捧げる相手を選ぶに等しいというわけだ。
そんな『設定』があったなら、ゲーム内でのシルフィラの行動も納得がいく。
ヒロインを殺してでも、ジャスティン王子を手に入れようとした彼女。
つまりだ。
十七歳の誕生日。
それまでに私は、血を吸う相手を見つけなければ死ぬ。
その相手は結婚して一生添い遂げる相手になる可能性が高い。
なので、それなりに気に入った相手が望ましい。
けど無理して隣国の王子とかを狙うと、ゲームのシナリオに従って死ぬ。
うん、でも問題はなさそうだ。
私はジャスティン王子と添い遂げたいとか思ってない。
学園には他にも男がいっぱいいるだろう。
その中から素敵な相手を選べばいい。
それに、血を吸う相手と結ばれなければいけないという決まりはないみたい。
なら最悪「血を吸うだけ」という関係でもいいわけだ。
こちらからはその分なにか金銭などを渡すビジネスライクな関係。
相手がいいと言ってくれればだけど、
それに私も、できればそういう関係じゃない方がいい。
好きになった相手から血を吸いたい。
でも、最悪の場合の選択肢があるのはいいことだ。
プレッシャーの度合いが全然違う。
さあて、では。
入学までに、学園にどんな男がいるのか、私と同時にどんな男が入学するのか、下調べをできる限りしておこうかな。
なんか男漁りしに学園に行くみたいだな……。
そんなことを思っていた私。
けど、学園に入学してしばらくしたころ。
とんでもないトラップが待ち受けていることを私はまだ知らないのだった。
ブラドフィリア公爵家ですくすくと成長し、あっという間に15歳。
来月にはヴァンダール王国立魔法学園に入学だ。
いよいよ『ロマファン』の舞台と接触することになる。
「シルフィラ、少しいいかな。大事な話がある」
そんなある日の夜、お父様が私を呼び出した。
ダンディーな公爵であるお父様は、私が赤ん坊だったときからちっとも歳を取らない。
お母様も同じく。
吸血鬼の一族はどうもそういう性質みたい。
嬉しい限りだ。
で、庭に呼び出された私はお父様に答える。
「どういたしました、お父様?」
自分でも背中が痒くなりそうな口調だけど仕方ない。
なにしろ今の私は公爵令嬢なのだ。
「うむ……お前も来月には魔法学園に入学。来年には十七歳だな」
「はい。ここまで育てていただいたお父様とお母様には感謝しかありません」
なんだろう。
娘が遠くに行ってしまうので、悲しくなったのかな。
実はこの人、けっこうな子煩悩だからな。
本人は隠せてるつもりらしいけど、娘は気づいてるんですよ。
でも、どうやら違うっぽい。
お父様は私を見ると、真剣な口調で言ってくる。
「これまでお前は、領民から集めた血を飲んで暮らしてきた。しかし、もうすぐそれでは足りなくなる」
「どういうことでしょうか?」
「人間から直に吸わないと、魔力が不足するようになってしまうのだ。人の身体から離れて時間が立てば立つほど魔力は発散してしまうからな」
そうなのか。
いろいろな書物を読みあさってきたが、そういう話はなかった。
吸血鬼に関する記述自体が少なかったから、一族の秘密として文字に残してないのかもしれない。
お父様は続ける。
「具体的には、十七歳の誕生日。それまでに眷属とすべき相手を見つけるのだ。そしてその者の血を直接吸う。そうしなければお前は死んでしまう。それが、我ら吸血鬼の一族に与えられた運命だ」
なんという無茶振りな運命!
いやたしかに、いつまでも若いままとか、食事をしなくていいとか、魔力が豊富とか、利点が多すぎるとは思っていた。
こんな種族が、どうしてもっとたくさんいて、逆に人間を支配していないんだろうくらいに感じてた。
けど、これなら納得だ。
「では……お父様もお母様とはそのように?」
「ああ、その通りだ」
私の問いにお父様は頷く。
「魔法学園で、彼女を見初めてプロポーズをした。そして生涯その血をもらい、我が眷属とする契約を結んだ」
「それは……その相手とは、必ず結ばれねばならないのでしょうか?」
「必ずしもそうと決められてはいない。だが、現代の多くの吸血鬼はそうしている」
なるほど……。
それはつまり、生涯を捧げてもらい、自分も生涯を捧げる相手を選ぶに等しいというわけだ。
そんな『設定』があったなら、ゲーム内でのシルフィラの行動も納得がいく。
ヒロインを殺してでも、ジャスティン王子を手に入れようとした彼女。
つまりだ。
十七歳の誕生日。
それまでに私は、血を吸う相手を見つけなければ死ぬ。
その相手は結婚して一生添い遂げる相手になる可能性が高い。
なので、それなりに気に入った相手が望ましい。
けど無理して隣国の王子とかを狙うと、ゲームのシナリオに従って死ぬ。
うん、でも問題はなさそうだ。
私はジャスティン王子と添い遂げたいとか思ってない。
学園には他にも男がいっぱいいるだろう。
その中から素敵な相手を選べばいい。
それに、血を吸う相手と結ばれなければいけないという決まりはないみたい。
なら最悪「血を吸うだけ」という関係でもいいわけだ。
こちらからはその分なにか金銭などを渡すビジネスライクな関係。
相手がいいと言ってくれればだけど、
それに私も、できればそういう関係じゃない方がいい。
好きになった相手から血を吸いたい。
でも、最悪の場合の選択肢があるのはいいことだ。
プレッシャーの度合いが全然違う。
さあて、では。
入学までに、学園にどんな男がいるのか、私と同時にどんな男が入学するのか、下調べをできる限りしておこうかな。
なんか男漁りしに学園に行くみたいだな……。
そんなことを思っていた私。
けど、学園に入学してしばらくしたころ。
とんでもないトラップが待ち受けていることを私はまだ知らないのだった。