第2話

文字数 650文字

 『なんで来ちゃったかな、君たちは。聞かなきゃよかったって、後で後悔しても責任取らないよ。別に、怪談とか怖い話をするわけじゃないけど。さっきも言ったけど、面白くはないよ。後味はすごく悪い』

 時間をおいたことで気持ちが整理できたのか、さきほどよりは落ち着いているようにも聞こえる。ちなみに、これは生配信形式だ。

 『ほら、戻るなら今のうちだよ。五秒待ってあげるから、そのうちに……。いや、話の内容にもよるよね』

  ため息のあと、配信者は沈黙した。動画ではないので向こうの様子は伺えないが、本当に話すべきかどうか、悩んでいるかのようだ。

 『今回話すのは、家族について。この表現、あまり使いたくないんだけど、毒親ってやつ。ほら、なんかこの時点で嫌な予感するでしょ。何回も言うけど、途中で気分が悪くなったら、すぐに閉じて、しばらく離れて、自分の好きなことして。無理する必要ないからね。「うちのほうが酷い」とか、「それくらいで」といった抗議は一切受け付けないので、こちら側から見るコメントは、今回は非表示にします。あと、いつも言ってるけど、ユーザー同士の議論は外でやってね。人のコメント欄で討論会しないで』

 ……嫌な予感と軽い頭痛がする。理由は判っている。これは私が聞いていい話ではない。

 『それじゃあ、そろそろ本題に移ろうか。みんな、覚悟はいいかい? すぐに離脱する準備はできてる? これが最後の忠告だよ』

 素直に忠告に従い、配信者が次の台詞を話し出す前に、私はブラウザを閉じた。
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