第3話―A(配信者側)

文字数 1,644文字

「今日は愚痴と嫌みと皮肉しか言わないよ。対象は、さっきも言ったけど主に家族。……はぁ。何なんだろうな、あの人たち。ごめん、泣いていいかな。本当にね、今回ばかりは笑えない。一応さ、言いたいことまとめたんだけど、やっぱり書いてる途中で無理になってきたんだよね。『家族なんだから』って部分と、『家族だけどさ』って部分が出てきて」
「ん~。とりあえず、今は言いたいことしか言わない。うまくまとまってなくても、頭の中がごちゃごちゃしてるんだな~って、軽く流して」
「クロコさん、職場でよく脇腹とか頭が痛くなることあるだけどさ、家族に話しても『誰だってそういうことあるだから、大丈夫』って返されるんだよ。いや、あのね、大丈夫じゃないから相談してるの。それで治ったり、楽にはならないから。風邪引いた時、薬飲むよね。何で? 誰だってなるけど、苦しいから、辛いからでしょ。……ちなみに、痛みの原因は仕事でのストレスかもしれない。脇腹に関しては、もしかしたら『肋骨間神経痛』ってやつかもしれない。名前怖いけど、字の通り、肋骨の間の神経が痛む症状。かれこれ、五年くらい痛いんだけどさ。さすがに我慢の限界なので、連休明けに病院行ってみます。って言っても、クロコさんの職場じゃなくて、世間での連休ね。病院と銀行が休みなのは、別の意味で痛いなぁ。今月は別の要件で病院行ったから、お財布事情が厳しい」
「あとね、今の仕事辞めて、ゆっくり旅行行きたいんだけど、その前に車買ってって言われてる。まぁ、分からなくもないけど、クロコさんのお給料でいつ買えると思うの。車買うより高い旅行って、どこまで行く気なの。海外? 英語喋れないのに?
そりゃ、行ければ行きたいよ。ロンドンとか、マチュピチュとか。でも、絶対止めるでしょ。『やったことないんだから、無理でしょ。どうせ、できないでしょ』って 。やりたいことはいっぱいあるんだけどね。あ~、一人で旅行行きたいなぁ」
 「新しい何か始めたくても、絶対止められるんだよね。さっきも言った『やったとことないんだから~』ってやつ。失敗したら『人の言うこと聞かないから、そうなった』だし、成功したら『誰だって、それくらいできる』だし。じゃあ、プロの料理人にも同じこと言える? 『料理なんて、誰だってできる』って。言わないでしょ? まぁ、プロと一般人を一緒にするのは、さすがに失礼だけどさ」
 「やりたいことについてだけどさ、『私たちだって、やりたいことあるけど、我慢してる。でも幸せなんだから大丈夫』って言われたことあるよ。ちなみに、私たちって両親のことね。やりたいこと自由にやれれば、もっと幸せになれるとか考えないのかなぁ」
 「できないって言ってるけどさ、じゃあ、クロコさんは何ならできるの? え、知らない? 何にもできない? そりゃそうでしょ。あなたたちが、『どうせできないんだから』って言って、何もさせなかったからね」
 「この調子だと延々と続きそうだから、今回の分は、そろそろ終わろう思います。最後に一言だけ、悩んでいる人にアドバイス……っていうほどでもないですけど、クロコさんが気をつけてること。『否定は呪い、肯定は祝い』です。自分のことを否定しそうになったら、ちょっとだけでいいので、この言葉を思い出してください。少しずつでいいので、自分のことを肯定してあげて、できることを増やしていきましょう」
 「最後までお付き合いいただき、まことにありがとうございます。今回は身内に関する話題ということで、うまく言葉に出来ない部分も多くありました。今回の配信を通して、真剣に自分のことと逃げずに向き合っていこうと思えるようになりました。家族とちゃんと話をして、曲げられないところや譲れないところを伝えていければいいと思っています。お相手は、作家志望の黒衣が務めさせていただきました。また次回、いつも通りの明るい話ができるように頑張ります。ありがとうございました!」
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