第14話

文字数 1,207文字

「なぜ、兵がここに?」
「俺がいるからだろう」
 ランディが悪びれもせず言う。
「どういうことかしら?」
 ミラが詰め寄るが、ハリーが手で制す。
「先の砂漠の町で手筈は整えておいた。足跡を残しておいた。集結できるように。三日経って連絡がない場合はここに来るようにと言っておいた」
「あなた、ここを攻撃するつもり?」
「リザノイドを手に入れられなければ、俺にとってここはなんの魅力もない。むしろ邪魔だ」
「最悪」
 ミラは怒りを隠そうとせず、言い放った。そして、ベリーも同じようにつぶやいていた。
 門番は指示を待っている。
「武力で来るつもりでしょうか?」
「噂のリザノイド相手にか?」
「ふ、俺の国の兵は、相手が誰であろうが恐れはしない」
「ま、それなら、お相手しましょう。ですがね、少年。私たちが圧勝した場合、いや、場合というより絶対にそうですが、そうすると、隣国との戦いというやつに支障が出るのではありませんかね」
「……なめられたもんだな」
「おや。噂でしかないリザノイドの力をあてにして、わざわざここまで来られた方の台詞とは思えませんね」
 ランディは息を止めているかのように顔を紅潮させている。
「あなたを人質にしてもいいのですが。あなたがしたようにね」
「好きにすればいいさ」
 ベリーは状況を見守るというより、ハラハラしすぎて自分が倒れるのではないかと、心臓を抑えていた。
「大丈夫です」
 キースが肩に手を置き、頷いた。
「……うん」
 あれ? なんか、安心するこの感じはなんだろう。
「では、まいりましょうか」
 ハリーが言うと、コアースのほぼ全員が門に向った。全員といっても、先頭を切るリザノイドが二十人くらいと、ミラ達が三十人くらいの人数。残されているのは、老人や体術を得てない資格者が数人のみ。
 人と同じ姿のリザノイドが二十人位とわかるのは、年老いて見える人がリザノイドの後方にいるからだ。ここに残っている中に、リザノイドは一人もいないのだ。
「ね、ねぇ、ミラ。この場所って普通の人には入れないんでしょう? だっだら、放っておけばいいじゃない」
「兵たちはここの存在を知って来ているの。確実に入口を知ってるのよ。出るたびに蹴散らして行くのは面倒くさいわ」
 軽く言ってはいるが、苦々しい顔つきだった。
「あなたはここにいてね」
「でも、ミラも行くんでしょう?」
「ええ、もちろん。心配ないと思うけど、ユール彼女をお願いね」
 ユールは頷いた。
「あなたも行って?」
「俺が行っても足手まといにしかならない。まだ、実戦を習ってない」
 しゃべった。ユールの声は細く頼りないが、態度は堂々としていた。
 ミラはくすっと笑って、門へ向かった。ベリーは彼女の背中を見ながら名付け子に、疑問をぶつけた。
「卵で全てを学ぶのではないの?」
「身体を持ってから約半年、学びながらでないと感覚がつかめない」
「…………あぁ……」
 理解したのと、がっかりしたのとで、言葉にならなかった。
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