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文字数 1,164文字
『はーい、乾杯!』
乾杯の掛け声と同時に、キンキンに冷えたビールジョッキがぶつかり合う。
目の前に5人の男子と、いつもより
これって、どう見ても……!
『美亜、ごめんってば!』
『女子会じゃなかったの?』
『だって、合コンだって言ったら、絶対来なかったでしょ?』
『当たり前でしょ!』
『てか、逆に感謝してもらいたいわよ。私が電話しなきゃ、美亜、ぼっち誕生日を迎えるとこだったのよ』
『まぁ……、そうなんだけど』
私はくいっと飲み干すと、数時間前、彼のケイゴに置き去りにされたことを思い出す。
私の誕生日のために、数か月前から予約してたという有名なレストラン。
目の前に豪華な食事がそろったそのとき、彼の携帯が鳴って、仕事の打ち合わせが入ったからと言って一人取り残された。
彼の仕事がうまくいってることを喜ぶべきなのに、その成功のせいで彼との時間が奪われていく。
仕事なんだから仕方ないんだって言い聞かせながらも、口に運ぶ料理は
『もう飲んじゃったの? 美亜、ペース早くない? ま、ここ、彼らのおごりだって言うし、今日はぱあっと楽しんじゃお。たまには
『……でも、なんか気が進まない』
『えっ、そお? 今日
『それで、アズサのどういった知り合いなの?』
『別に知り合いってほどじゃないよ。今日、食堂で、それもたまたま座ったテーブルの隣に彼らがいたってだけ。ほら、一番奥の彼、サクヤくんっていうんだけど、なんか彼女にフラれちゃったみたいなんだよね。今日は彼を元気づけさせようってことで、“レッツ合コン!”ってことになったの』
『なにそれ、なんか
『そっ、理学部らしいよ。どお、気になる人いた?』
『いない』
『えぇ~っ、悲しいこと言わないで。とにかく楽しも! 運良ければ男ゲットできるかもしれないし、
『だね』
空のジョッキを片手に、気づけば周りはカップル成立しつつあった。
ついさっきまで私と話していたアズサも、お目当ての男子の隣をキープしちゃってるし。
私だけが浮いちゃってる……。
私が彼氏持ちだってことは、誰も知らない。
別に秘密にしていたわけでもないし、彼に言われたからでもない。
たまたま付き合った相手がモデルとして成功して、
ほんの数年前まで本屋の店員さんだったのになぁ。
今はちょっと遠くに感じる……。
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