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文字数 880文字
私って、昔からそう。
かわいそうって思うものには、すごく……、いやかなり弱い。
とくに、『拾って下さい』って書いてあるものには。
誰もが経験していると思う。
道端に捨てられた子猫や子犬を見ると、つい手を差し伸べたくなるような、あの衝動的な感情を────。
“うわぁ、かわいい”まではいいんだ。
あの訴えかけてくるような、つぶらな瞳で見つめられると放っておくわけにはいけない。そんなんで、親には何度怒られたことだろう。
ピンポーン。
ピンポーン。
「……う~ん、あったま、イタ……」
最悪、二日酔いだ。
きのうは浴びるほど飲んじゃったから。それに……。
ピンポーン。
もぞもぞと起き上がる。
カーテンの隙間から日差しが降り注ぐ。
だるい……、体のあちこちが痛い。
早く起きなきゃ。
「ニャオ」
先週買ったばかりのラグの上に、子猫が一匹。
まん丸な可愛らしい目をして、私になにか訴えかけている。
ん?
「えっ……、猫っ!?」
ズキズキと痛むなか、頭を抱える私。
なぜ猫が、この家の中に!?
ピンポーン。
「……ん……」
隣で寝返りを打つカレ。
大人しそうな顔をして、実は肉食。
そういうの、嫌いじゃないけど。
カレを起こさないように、そっと抜け出す。
ピンポーン。
ピンポーン、ピンポーン。
ったく、朝っぱらから一体誰よ!?
「はーい!」
勢いよくドアを開け、すぐさまドアを閉める。
「よっ、
ドアノブをガチャガチャと引っ張る、その人────。
もうお分かりだと思いますが、こっちが本命の彼ケイゴ。
「顔見れたんだし、
「もしかして、きのうのこと、まだ怒ってるとか?」
「お、怒ってない……」
ドアの外には、交際2年目の彼氏。
家の中(ベッド)には、きのう知り合ったばかりの男。
つまり、私!
今、非常にマズイ状況、人生最大のピンチに直面してるんですっ!
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