召使。

文字数 1,740文字

む…。
朝か。
召使。
確か指を鳴らすと言っていたな。
…懐かしい。どれ。
…来ないぞ。
…この!…この…!
ぬああああああ!!!
しまった。やり過ぎたな。
つい魔力を爆発させてしまった。
…しかし、この分なら身体はすっかり回復したようだ。
きっと今に召使どころかゼルレイアまで飛んでくるぞ。
失礼しますぅ。
…お呼びでした?
(歩いてきた…?
あれほどの爆発を聞いたというのに、危機感にかけているな…。
どうにも間の抜けたような女だ。
全く。魔族の未来が心配でならん)
あ。危ないですよ。
魔王覚悟ぉー!ぐはぁぁぁっ!!
(昨日の天界の民とやら…!!
なんと…この召使、まるで蚊を落とすように…!!)
お怪我ございませんかぁ?
ふん。
礼を言おう。
(どうなっているんだ。
まさかこの召使、王族の者か?
ゼルレイアの妹なのではないか?
影から王を支えるための…)
新しい四天王さんですかぁ?
我が四天王だと?
なんか蚊の鳴くような指パッチンが微かに聞こえたので来たんですけどぉ。
(こいつ…!!)

教育がなっていないな。
我が名はアポカリアス。
44代魔王。破壊神と呼ばれた男だ。
えぇー…?
嘘でしょ?これがアポカリアス様ぁ?
(これ!?こいつ我のことこれって言ったぞ!!)

貴様、身の程を…!
あ!わかったぁ!寝起きだからですねぇ!
失礼しましたぁ。
この館の召使の、召使ちゃんですぅ。
ふん。わかればよい。

(結構本気だったんだが…。
もしかして、我は我が思っている以上に弱っているのか?)
アポカリアス様ぁ。
まずはドクターに診断してもらったらいかがですかあ?
ドクターだと?
魔力、戻ってないのか心配なんですよねぇ。
あ、アタシ心が読めるんですぅ。
(何…!?
ってことはこいつ、まさか我の考えていることが全て…!!
今のこれも読まれているというのか…!?
考えるな、考えるんじゃない!)
あのぉ…。
プロテクト、かけないんですかぁ?
なんだそれは!
(プロテクト!?我の時代にそんなものはなかった!!)
あはぁ、アポカリアス様超必死ぃ。
ちょっとかわいいかも。
む…!
(くそう!なんなんだ全く!こんな小娘に、か、かわいいだと!?
バカにするのも程々にしろ!
現代は一体どうなってしまったのだ!?)
言わないようにしてもバレバレですよぉ。
(早くそのプロテクトとやらを教えるのだ!
貴様にこれ以上心を読まれるのは我慢ならん!)
あー、読まれるのわかったからって声に出さないんですかぁ?
しょうがなあなぁ。
プロテクト、って唱えるだけですよぉ。
大切なのはイメージすることです。
自分の心をイメージしてぇ、それに囲いを作るんですぅ。
あ、最後に私の顔を思い浮かべてぇ、パスって呟いてくださいねぇ。
貴様の顔とパスはなんのためにだ?
私には既にプロテクトが破られている状態なのでぇ、改めてロックしなきゃいけないってことですよぉ。
スマホみたいなもんですよぉ。
スマホ…!?
魔の森に住むワーウルフ、スマホのことか…!?
はぁ?
なんだそのイラッとする反応は!
(む、ムカつく!この女!今すぐ極滅呪文で消し炭にしてやりたい!)
これですこれ。
スマートフォン。
携帯電話…あ、アポカリアス様は携帯どころか電話のない時代かぁ。
で、でん?でん?
(魔法がありながら科学技術なんざ進歩させたというのか!嘆かわしい!)
すっごい便利なんですよぉ。
ほら。
な、なんだ?
耳に当ててくださぁい。
『はい。ゼルレイアです』
な…!?なんだこれは…!?
この板からゼルレイアの声が聞こえる…!
『アポカリアス様…?
   …召使ちゃんの仕業ですね。
   大変失礼を。この板を、召使ちゃんに渡し
   ていただけますか?』
あ、あぁ。
ゼルレイア様ぁ。
うへぇー、ごめんなさぁい。
とりあえず、アポカリアス様調子が悪そうなので、ドクターの所に連れていきますねぇ。
はーい、わかりましたぁ。
はーい。
なるほど。
遠くの者と、直接会話が出来るのだな。
そういうことでぇす。
とりあえず、ドクターのとこ行きますけど、プロテクトかけましたぁ?
い、いや。
よし。
プロテクト!
パス!
ちぇー、アポカリアス様の心読めなくなっちゃった。
じゃあこちらでぇす。
よ、よし!出来たぞ!
どうだ!小娘!
テンション上がってるのもわかりますけどぉ、そのままだと威厳とか、ないですよぉ。
…貴様まだ心が…!
いや、普通にバレバレですしぃ。
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登場人物紹介

ゼルレイア

現在の魔王。
若くして聡明であり、歴代最高の王と謳われる心優しき魔界の女王。
人間との争いを望まず、和平的な解決を望んでいるが、ガンガン攻め込んでくる人間達に辟易している。
精神だけでなく、肉体と魔力も過去最高レベル。
アポカリアスの再来とまで言われたが、実際の戦闘能力はアポカリアスのおよそ50倍に相当する。

アポカリアス

強力過ぎるその魔力から、魔界の民からも恐れられた44代魔王。
あまりに強力過ぎるために、魔界の地下奥深くへ封印されていた。
満を持して復活するも、あまりの戦闘力インフレに自分が既に及びではないことを悟るが、言い出せなくなったため、騙し騙しでやり過ごしていく。

グレゴリオ

知将と呼ばれる魔界の賢臣。
ゼルレイアの先代の頃からの付き人であり参謀であり右腕。
高齢化に伴い、戦闘はあまり得意ではないが、それでも四天王全員をまとめて相手にしても難なくいなすレベル。

イケメン天使。

ことある事に魔王の命を狙って突撃してくる。
天使のため死なない。

召使ちゃん。


スマホ。

スマホという名前のワーウルフの一族。
スマホ=ソフトバ。
スマホ=エユウ。
スマホ=ドコモン。
などがいる。

なお、この物語に登場するのは、スマホ=ボダフォ。

ドクター。

骸骨の医師。
一族の魂を全て背負って生きる種族。
死んだ先代達が顔を覗かせることもしばしば。

クィリア
四天王の1人。
妖艶な美女。クールな振る舞いに反して炎を司る。

ルゼイオ。

四天王の一人。
雷を司る。陰気で、嫌な奴。常に貧血気味。

シェリラ。

四天王の一人。
水を司る。双子の片割れ。

ファリル。

四天王の一人。
土とか毒とか雑多に司る。双子の片割れ。

ジーク・ヴァン・ヴォルグスタイン。


人間のなんかすごい勇者

ハイネジア


人間のなんかすごい巫女

人間の兵士達。

いっぱいいる。

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