ドクター。

文字数 2,952文字

ドクターぁ。
患者さんでぇす。
む…患者という呼び方が適切とは思えんな。

カカカ。私の診察を受けるってんなら、どんな症状だろうと、どんなお方だろうと、それは患者さね。
ようこそアポカリアス様。
どういったご要件で?
ふん。
封印から解き放たれたばかりで、身体が思うように動かない気がする。
我の魔力が万全なものかどうか見てほしい。
お安い御用で。
では、召使ちゃんは出ていっておくれ。
何かあれば、また呼んでくださぁい。
早く下がらんか小娘。
アタシぜーんぶ知ってますよぉ?
ほれほれ、はよう出てった出てった。
まったく…。
はてさて…。
まさか復活するとはねぇー!
…なんだ貴様。
お久しぶりだねフリスくん。
な…!
お、お前…!!
フレデリックか!?
いやぁー!何年ぶりかな!
キミが封印されたのがえーっとえーっと、672年前か!それ以来だねぇ。
まぁ封印されてた君にとっちゃ一瞬の時間だったと思うけども、僕はあの後30年くらい生きて死んだから?
いや、僕にとっても久しぶりなことは間違いないっていうか、死んでたけど一瞬っていうのもね、僕の一族は代々魂だけ身体に残ったまま死ぬから。
…ん?
そうだな…記憶があまりハッキリしなかったんだが。
そうか、672年前…封印…。
おっと…それ以上は思い出さなくていいよー?
俺が封印された時、お前は一体何をしてたんだったかな…!
仕方ねーじゃぁん!
あれキミのこと庇ってたら僕だって封印…いや、僕の場合は粉砕されて墓地かな…。
と、とにかく仕方なかったんだってばぁ!
唯一無二の友だと疑っていなかったお前に、あっさり見捨てられた俺の気持ちがわかるか!!
悪かったってほんと反省してるよ!
過去のことはもうどうしようもないから!今!
ほら、困ってんだろー?
僕の助けが必要だろ?
…ふん!
お前のことを許した訳じゃないからな!
さっさと手を貸せ!
曾々々…何代だっけ?
とにかく、子孫の身体を借りてるだけの僕にも、あまり時間はないからね!
ちゃちゃっと調べてあげよう!
封印された影響で、魔力が戻らない!
そういうことだね!
あぁ。
どうだ。何か魔力に干渉する術式が組み込まれているんじゃないか?
復活してから、どうも俺よりも力の強い連中ばかりでな。
こんなことあるはずが…。
あー…。
フリス。いや、アポカリアス様。その、言いにくいんだけどね。
…何だ。
まさか、治らないのか…?
いやぁー、その、まぁ、逆?
完治、してるというか…。
むしろ前よりちょっと強いくらい?
そんな馬鹿な!
俺があんな若造どもに劣ってるはずが無いだろう!
なぁ。
ちょーっと落ち着いて考えてみよう。
初代の魔王様。魔力はどうだった?
いや、歴代最高と名高いキミからすれば、比べるのもアホくさいとは思うんだけども。
俺の足元にも及ばないな。
まぁ、あの頃はまだ魔術も発達して…。
…!!!
キミの時代から672年。
後輩達はどんどんインフレしていったってわけさ。
つまり、間違いでもなんでもなく、ほんとに彼らの方が強いってことに…。
ふ、ふざけるな!そんなことあっていいはずが無い!
ま、魔王だぞ!?44代魔王だぞ!?
破壊神、死の権化、絶対的魔王、数々の言葉で讃えられたこのアポカリアスが!?
あいつらよりも格下だというのか!
声が大きいよ…!
ドアの外まで聞こえたらどうすんのさ…!
とにかく、えっと、キミがその、ポンコツだと。
言葉を選べ!
言っておくが、お前の言ったポンコツ風情でも、魂ごと一族まとめて消滅させるぐらい訳無いんだからな?
ま、待てって!
とにかく、他の連中に気付かれるわけにはいかないんだろ!?
診断書は適当に誤魔化しとくから、キミもバレないように気を付けろよ!
言っておくが、アポカリアスは神格化されているほどの存在なんだ!
それが大したことないなんてことがバレたら…。
歯向かう連中など焼き払ってくれる!
ハッキリ言おう。
キミの力は、現代の四天王並だ。
弱いとは言わない。けど、それより上には絶対勝てない。
四天王におまけが一匹ついただけでも勝利は無くなる。
…ば、バカな!
そんな…!
嘘だ…!
そんなことが…。
せっかく復活したのに、すぐにお払い箱になるキミは見たくない。
今度こそ助けたいんだよ…!
フレデリック…。
ボク達、友達だろ?
…ではもし、俺が役に立たないことがバレて再び封印されるとなったら?
安心してくれ。
次に復活した時こそ、上手くやるよ。
やっぱり見捨てるんじゃないかこの!
お前、お前!この!お前なんか!
大嫌いだ!
まずい、誰か来るぞ!
落ち着いて!それと一人称直して!
なに!?
俺じゃなくて我だろ!アポカリアス!
そ、そうだ、我は…。
我はアポカリアス!
…いきなり自己紹介してどうしたんですかぁ?
む、召使。貴様か。
ドクターぁ。
アポカリアス様の具合はどうですかぁ?
かなり危険な状態ですな。
当面、魔力の使用は控えてくだされ。
(一瞬でキャラ変えたな…いや、これがアイツの子孫の魂なのか。アイツももう、死んでいるのだな…。
ん?そうか、話を合わせてくれているのだな。良い子孫だ)
…ふん、仕方あるまい。
すぐにでもこの力、振るいたいものだが。
治るまではどれ程かかる?
(できるだけ長めに…時間を稼ぐ必要がある。その隙に魔力を高めるのだ…)
1週間、といったところですな。
(短いッ…!!1週間だと…!?無理だ、1週間で今の数倍、いや、数十倍の魔力を得るなど…!この役立たず!)
あらぁ、それじゃあ、とりあえずゼルレイア様のとこに報告しに行きましょうかぁ。
アポカリアス様も来てくださぁい。
案内しろ。
(誰にも悟られてはいけない…俺の、いや、我の魔力が…四天王レベルしかないなどと…!)
お大事に。
こちらでぇす。
(…落ち着け。我はまだ学ばねばならぬことが沢山あるのだ。まずは情報を得るのだ。
ここはどうだ?城の内部はあの頃と変わっていないように見える。
そうだ、あの絵。
やはり変わらない。この場所は変わらずに我を受け入れてくれている…)
(アポカリアス様ぁ。)
…!?
(直接脳内に語りかけていまぁす。
こういうことも出来るんですよぉ)
(我はどう返すべきなのだ!?
こんな芸当出来んぞ…だが、同じことが出来ずに言葉を発するというのもなんだか負けたような気がして気に入らん…ど、どうすれば…)
(あはは、まぁた焦っちゃって。
かーわいぃー。
大丈夫ですよぉ。私にはちゃんと見えてますからぁ)
(…貴様、プロテクトとやらは…)
(あ。いっけなぁーい。アタシったら自白しちゃったぁ。
あれ、嘘でぇす。プロテクトは本当ですけどぉ、パスって言うのはぁ。私にだけ鍵を開けておくための呪文でしたぁ)
(うむ。
ふん。
ほう。
つまり。
それは。
貴様は。
知ってしまったのだな。
我の、秘密を…!!!)
(だぁいじょぶですよぉ。
他言はしませぇん。
このまま見てる方が面白そうだしぃ)
(消し炭にしてくれる…!)
(言い難いんですけど、アタシ、四天王の上の存在なんですよぉ。)
(なんだと!?)
(頂点がゼルレイア様でぇ、次がグレゴリオ様。で、アタシが来てぇ、四天王。なのでぇ、アポカリアス様ではアタシは倒せないですよぉ)
(なぁ、一つ聞いてくれるか。
もう秘密もバレているんだ。
聞くだけでいい。他言はするな)
(なんですかぁ?)
(こんなことなら、復活したくなかったな…)
あははははははは!!!
き、貴様!笑うな!笑うな…!
頼むから…!
笑うな…。
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登場人物紹介

ゼルレイア

現在の魔王。
若くして聡明であり、歴代最高の王と謳われる心優しき魔界の女王。
人間との争いを望まず、和平的な解決を望んでいるが、ガンガン攻め込んでくる人間達に辟易している。
精神だけでなく、肉体と魔力も過去最高レベル。
アポカリアスの再来とまで言われたが、実際の戦闘能力はアポカリアスのおよそ50倍に相当する。

アポカリアス

強力過ぎるその魔力から、魔界の民からも恐れられた44代魔王。
あまりに強力過ぎるために、魔界の地下奥深くへ封印されていた。
満を持して復活するも、あまりの戦闘力インフレに自分が既に及びではないことを悟るが、言い出せなくなったため、騙し騙しでやり過ごしていく。

グレゴリオ

知将と呼ばれる魔界の賢臣。
ゼルレイアの先代の頃からの付き人であり参謀であり右腕。
高齢化に伴い、戦闘はあまり得意ではないが、それでも四天王全員をまとめて相手にしても難なくいなすレベル。

イケメン天使。

ことある事に魔王の命を狙って突撃してくる。
天使のため死なない。

召使ちゃん。


スマホ。

スマホという名前のワーウルフの一族。
スマホ=ソフトバ。
スマホ=エユウ。
スマホ=ドコモン。
などがいる。

なお、この物語に登場するのは、スマホ=ボダフォ。

ドクター。

骸骨の医師。
一族の魂を全て背負って生きる種族。
死んだ先代達が顔を覗かせることもしばしば。

クィリア
四天王の1人。
妖艶な美女。クールな振る舞いに反して炎を司る。

ルゼイオ。

四天王の一人。
雷を司る。陰気で、嫌な奴。常に貧血気味。

シェリラ。

四天王の一人。
水を司る。双子の片割れ。

ファリル。

四天王の一人。
土とか毒とか雑多に司る。双子の片割れ。

ジーク・ヴァン・ヴォルグスタイン。


人間のなんかすごい勇者

ハイネジア


人間のなんかすごい巫女

人間の兵士達。

いっぱいいる。

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