目覚め。

文字数 1,545文字

魔王様、もう一週間も飲まず食わずで祈り続けていますな。
流石に少し休まれた方がよろしいのでは?
今ここで止めるわけにはいきません。
人間達の勢力は徐々に魔界へと侵食しているのです。
確かに。
魔界の入口、デモンズゲートは既に陥落。人間達の拠点と成り果てたのも、五年も前のことです。
先日とうとうコンビニまで出来たとか。
嘆かわしい。
それほど安定した生活をしているとなれば、彼らが攻め込んでくるのも時間の問題ですな。
昨日偵察に行きましたが、まるで魔界の入口であることなど微塵も感じさせないほどに、明るい街でした。
おや、一週間ほどここで祈り続けていたと思ったのですが。
分身に行かせたのです。
というか、交代でやってますので、普通に休憩は取っているのですよ。
わたくしも歳をとったものです。
全く気が付かなかった。
いえ、魔王様の力がそれほどまでに強大なこともあるのでしょう。
…!!
魔力の目覚めを感じます…!
魔王様。
止めるなら今です。
その者は歴代で最も強大、しかし同時に、最も凶悪だったと。
魔王様の思想、平和主義に反します。
なんと言われようとも、私は止めません。
世界分断計画を実行に移すためにも、彼の力が必要なのです。
44代魔王。破壊神アポカリアスの力が。
むっ…!
魔王様…!
ォォォォオォオォオォオォ!!!!!
くっ…!
魔力の爆発が…!
グレゴリオ、結界を張ります!
このままでは城ごと吹き飛ばされかねません!
…おや?
収まりましたな。
ぬ…?
目覚めましたか、アポカリアス様。
貴様は何者だ?
ほう、その王冠。現在の魔王のようだな。
何代になった?
私は97代魔王。ゼルレイアです。
アポカリアス様。あなたの力をお借りしたく、封印を解かせていただきました。
あれから53代か。
およそ600年と言ったところか?
人間は既に滅ぼしたのではないのか?
何故我の力が必要になる?
あなたのその強大な魔力で、世界を二つに分断してほしいのです。
…ほう。
その目を見てわかった。貴様はどうやら争いを好まぬようだな。
人間は未だ滅んでいない。それどころか、我らが領土をも奪われつつある。
その通りです。
不甲斐ない。
魔族も落ちたものだな。
貴様は今すぐ退位しろ。
私が再び王位を継承する。
いいえ。
人間を滅ぼすことは無益です。
無事に世界を分断することが出来たならば、私は王位を貴方へとお返し致しましょう。
貴様。
我に楯突くというか。
なかなか肝の座った女だ。
魔王覚悟ぉぉーー!!!!
邪魔をしないでください。
ぐあああっ!!!
…なんだこいつは。
人間ではないようだが?
彼らは天界の民です。
ふん。
ひとまず貴様に礼を言っておこう。
復活したばかりで、身体がまだ思うように動かん。
こんな雑魚、一捻りだったんだがな。
反応が僅かに遅れてしまった。
そうでしょう。
まずはゆっくりと休息を取ってください。
魔力が完全に戻った頃、あなたの力を貸していただきます。
ふん。
いいだろう。
寝室に案内しろ。
こちらです。
(おかしい。まず天界とはなんだ?
あの尋常ではない速度は一体…。
それに、この女の魔力。
先の、手を抜いたような一撃でさえ、この我と同等の…。
いや、そんな馬鹿なことがあるはずもない。
一撃特化型の魔力形成をしているのだろう)
当時の内装を再現しておきました。
何かあれば召使をお呼びください。
指を鳴らせばすぐに駆けつけます。
(それにしてもこの女、このアポカリアスを前にしても全く物怖じする様子がない。
これだけ着丈な女は、我の時代にはいなかった)

ゼルレイアと言ったな。
はい。
抱いてやろう。
光栄です。ですが。
(消えただと…!?)
今はまず身体をゆっくり休めてください。
それでは、おやすみなさい。
ふん。
(いつの間に背後へ回った…!?
全く見えなかっただと…!?
馬鹿な!この我がそんなはずは…!)
まぁ良い。
今日は休むとしよう。
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登場人物紹介

ゼルレイア

現在の魔王。
若くして聡明であり、歴代最高の王と謳われる心優しき魔界の女王。
人間との争いを望まず、和平的な解決を望んでいるが、ガンガン攻め込んでくる人間達に辟易している。
精神だけでなく、肉体と魔力も過去最高レベル。
アポカリアスの再来とまで言われたが、実際の戦闘能力はアポカリアスのおよそ50倍に相当する。

アポカリアス

強力過ぎるその魔力から、魔界の民からも恐れられた44代魔王。
あまりに強力過ぎるために、魔界の地下奥深くへ封印されていた。
満を持して復活するも、あまりの戦闘力インフレに自分が既に及びではないことを悟るが、言い出せなくなったため、騙し騙しでやり過ごしていく。

グレゴリオ

知将と呼ばれる魔界の賢臣。
ゼルレイアの先代の頃からの付き人であり参謀であり右腕。
高齢化に伴い、戦闘はあまり得意ではないが、それでも四天王全員をまとめて相手にしても難なくいなすレベル。

イケメン天使。

ことある事に魔王の命を狙って突撃してくる。
天使のため死なない。

召使ちゃん。


スマホ。

スマホという名前のワーウルフの一族。
スマホ=ソフトバ。
スマホ=エユウ。
スマホ=ドコモン。
などがいる。

なお、この物語に登場するのは、スマホ=ボダフォ。

ドクター。

骸骨の医師。
一族の魂を全て背負って生きる種族。
死んだ先代達が顔を覗かせることもしばしば。

クィリア
四天王の1人。
妖艶な美女。クールな振る舞いに反して炎を司る。

ルゼイオ。

四天王の一人。
雷を司る。陰気で、嫌な奴。常に貧血気味。

シェリラ。

四天王の一人。
水を司る。双子の片割れ。

ファリル。

四天王の一人。
土とか毒とか雑多に司る。双子の片割れ。

ジーク・ヴァン・ヴォルグスタイン。


人間のなんかすごい勇者

ハイネジア


人間のなんかすごい巫女

人間の兵士達。

いっぱいいる。

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