第3話 笑顔の未来

文字数 592文字

 わたしたちも人込みの中に飛び込んで身を任せた。
 たどり着いたのは、映画館のロビー。

「あ・・・いた!」

 そこには数人の人。男の人も女の人もいる。一目で外国の人だと分かる顔立ち。周囲のギャラリーに取り囲まれても、その外国の人たちの輪はきらきらと光を放っていた。
 そして、その人たちの中に混じって女の子は立っていた。
 ちょうど、帽子を外すところだ。
 ふわっ、と帽子からこぼれる髪はブルネット。
 顔が似てる訳じゃない。腕もある。
 けれども、雰囲気が。幼さの中に、人格と意思と、そして希望を備えた少女の姿。
 ノネちゃんの、それだ。

 そこで開かれていたのは、イタリア映画のプロモーションだった。
 その女の子は主人公の姪、という設定らしい。
 小作品だけれども、温かさが伝わってくる出演者たちの笑顔がその輪にあった。
 どうやらいたずら心のある女の子は、ふらっ、と姿をくらましてサンシャインの下を散歩していたようだ。監督からこつっ、と頭を撫でられてふふっ、と笑っている。

「来週、観に来よっか」

 三田くんがそう言ってくれた。

「うん」

 そう一言言った後、わたしは追加する。

「わたし、何だか嬉しい」

 もう一つ追加する。

「なんだか、じゃない。すごく嬉しい」

 もう一度、三田くんの手を握る。
 きゅっ、と握り返してくれる三田くん。

「長坂さん、笑いなよ」

 返事の代わりに、わたしは笑って、そしてはにかんだ。
 

おわり
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