第4話 ケーキ屋のケンさん=不景気なケーキ屋を景気よくする
文字数 1,567文字
東京にコロナ禍が蔓延り、人々が金欠の断末魔に喘ぐとき、
その漢は、北東からふらりと現れるという。
○南千住の比較的中の上なケーキ屋、Oishiize Nakamura de Minamisenjuの店内、神無月の夕暮れ
リンゴーン♫
引きつる売り子。
5号のチョコレートケーキでしたね。出来てますよ。ちゃんと幸一君の名前も入ってるんだから。
サービスにココアパウダーもつけますから、皆で飲んで下さいね。幸一君の九歳の誕生日だから、蝋燭も九本入ってますからね。..税込みで3300円です。
財布を確認する梅子。
キャッシュカードを売り子に手渡す梅子。
...Ppppppp!
カードに残額がなく、異音がするレジ。
騒ぎを聴きつけ、奥から出て来た店主オイシーゼ中村。
一旦出された幸一のケーキを泣く泣く押し戻す梅子。
待てっ!
そのバースデーケーキ、差し戻す必要はない。
北東からケンさん登場。
Pppp...! (すみません、このカード使えません)
Ppppp...! (すみません、このカード使えません)
Ppppp...! (すみません、このカード使えません)
騒ぎを聞きつけた貧しい母子家庭が長蛇の列。
バリバリバリバリっ!
寒くなってきたので、上半身裸にならずに胸の前ボタンだけ開けるケンさん。
わーい、わーい!
ギャーギャー!
速いもん勝ちっ!
既に、掠奪状態の店内。
(poor lives matter !)
あざとく風呂敷にケーキを包む梅子。
秋の迷言を残して、颯爽とハケるケンさん。
リンゴーン♫