第1話 イントロダクション

文字数 2,196文字

―そう私たちは今まさに乗ってしまったんです。忘れられたはずの都市伝説的幽霊列車に―



まあ正確に言うと乗ったのではなくて、怪しいとわかっていながら犬の車掌の可愛さに誤魔化されてなんとなくノリで乗っちゃた感じなんですが‥‥。


何でそんなことになってしまったのかと言うと、話は二三時間くらい前に遡ります。

私の名前は白井ユリ。雛城高校二年生。部活は無所属・・・は無理なので文化部という文化祭の時だけ動員される人員にカウントされている。


その日の帰りに、友人のユウとコウと一緒にハンバーガーチェーンの和寿バーガー村山台駅前店にいた。私は届いたばかりの熱々のフライドポテトをかじりながら、ほか二人の友人たちに幽霊列車が現れるという噂が載せられてるオカルト専門サイトをスマホのブラウザに開いて見せた。

「あのね〜昔から村山台駅って気持ち悪いぐらい人が死んでいるんだって。自殺とか事故がめちゃくちゃ多くてさ、しかも不自然なヤツ‥‥」

「あっそれならわたしも聞いたことあるかも。 YouTubeで昔のテレビ番組の録画があってさ、見てみたんだけど怪奇特集みたいな二時間番組で扱われてたよ。駅名は伏せられてVTRも周辺のビルとかモザイクかかってるんだけど確かに村山台駅だった・・・・。けどさぁそんな物騒な話なんて聞いたこと無いでしょ?たぶんユリのその話も大昔の話だって」

「いや昔じゃなくて、つい最近も昼間に飛び込みがあったらしいだって。大きく報道はされてないけど、かんぜんに車輪に巻き込まれちゃってさバラバって・・・・わかるでしょ?」

「ユリちゃん、そういうの面白がるのやめたほうがいいと思うよ・・・・」
「いやいや死んだことを別に面白がってるわけじゃないんだけど・・・・。たださぁ、なに気に本当に不思議なことが起こりえる場所じゃないのかなって?こうが言うとおり昔のはなしだけど、中には関東で唯一幽霊電車が通過する駅、とかとんでもない都市伝説が流行った駅だったんだよ」
「え?なにそれ?聞いたことないけど」
「村山台駅には、いろんな幽霊の目撃談があったみたいなんだけど、つまりいまでいう実話怪談ってやつ?それでその中でも一番エグい話にさ、深夜電車がすべて通り過ぎたあとの静まった駅に突然四番線ホームが現れて、あの世からの幽霊列車が死者たちを迎えにやって来るとかいう噂。村山台は三番線までしかなくて、実際は四番線ホームなんてないんだけどさ」
「幽霊列車?」
「幽霊電車でも別にいいけど。多分電気で動いていないんだろうから列車が正しいんだろうけどさ」
「どっちにしろ嘘くさ〜」
「でもさ、もし本当にあったらどうする?」
「ユリちゃんその話、本気で言ってるの?」
「いやユナそんな目で見ないでほしいけど、なんて言うかあたしの母親の世代だと、村山台駅って心霊系の中心的な存在だったんだよ。この辺村山台を中心にして、南の南町通り、北の雛城にはやたら多くの都市伝説的な噂があったらしいんだわ。うちらの雛城高校の先輩たちのなかには、当時の心霊ブームに乗っかって、噂の真相を探るのことが流行ってたらしいよ。エスカレートして警察にたくさん補導されて問題になったらしいけどね」

「あっそれ!それらしい話を私も聞いたよ。なんでも昭和の大昔に作られた雛城高校旧校舎ってのがあって、その三階のトイレに当時現役の花子さんがいたらしいとか。その旧校舎は壊されて無くなったんだけど、新しい校舎になっても在校生がコックリさんで花子さんを召喚しようとやりまくった結果、怪奇現象がたくさん起きて収集つかなくなっちゃって、八王子の偉いお坊さんに来てもらってお経を上げてもらったんだ、とか嘘のような本当の話だって数学の岸田が言ってたよ」

「そうそうそんな感じの噂がたくさんあったらしいんだよ。で私もそれ聞いてネットで検索してみたらさ、当時のロカルト系ログとか残しているウェブサイトを見つけてそれによると、未だにマニアたちによって語り継がれているみたいなんだよ。私もカルト的に信じてるわけじゃないんだけど、なんかさ・・・ちょっと深夜の村山台ってどんな感じ家この目で見てみたいと思ってね?」
「ユリちゃんの昔から思いつきで行動するよね」
「それって中二病みたいな意味で言ってる?やめてよ!せめて高ニ病にしてよ」
「高二病ってなんだよ?意味わかんねぇわ・・・。でもトリマ行くか行かないかで言うなら、私は行ってみる!に一票」
「コウならもう聞く前にそう言うとわかってたよ!・・・・で、ユナはどう?」
「うーん、あんまり気が乗らないかもでも・・・。でも二人が行くっていうなら私も行くよ」
「よし!それじゃ駅が開いてる間だけでも行ってみようか!まだ閉まるまで二三時間はあるでしょ?我が雛城高校のヤバい先輩たちは駅が閉まった後に、フェンスを乗り越えて勝手に侵入して探索したとかしないとか・・・。でもさすがに今は無理だから、合法的に行くってことで」
「私はOKだよ」
「二人だけで行かせるのは不安だからね・・・・」

とこんな感じで、私の好奇心から二人を巻き込んで、忘れられた都市伝説である『村山台駅の幽霊電車の噂』探索は、ハンバーガー店を出た頃には私よりかコウの方が興味を持ったようで、彼女の陸上で鍛えられた脚力に逆に引きづられるように、私とユウを含めた三人はそこから歩いてすぐの村山台駅へと向かうのだった。

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登場人物紹介

白井ユリ。主人公。雛城高校二年生。二年になってバスケ部をやめて今は無所属。身長百六十センチ。体重ヒミツ。髪は肩よりちょっと長いくらいで黒髪を後ろで一つ結びにしてる。校則は茶髪は禁止だけどポニーテールは一応OK。



物語の中心的キャラクター。

紫山コウ。雛城高校二年生。陸上部所属。

瀧沢ユナ。雛城高校二年生。美術部所属。少し霊感あり。

犬の車掌。

千徳ユミヨシ。八王子にある儀仗大学に在籍する大学生。しかしずっと前に亡くなっている。それが何年前のことかだったか本人も忘れてしまっている。

海辺に現れた謎の女の子。

正体不明のおじさん。

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