第3話 幽霊列車
文字数 3,208文字
振り返ると周りの風景は現実の世界ではなく、まるで宇宙のように暗闇が何処までも遠くまで続いている。その中で駅の構造物と私たちだけが孤島のように存在していた。
私たちが降りてきた階段を振り返えってみると、連絡橋が向こうからどんどん消えてゆくのが見えた。橋を構成する橋脚や壁がつぎつぎにまるでコンピューターグラフィックスのポリゴンみたいに細かく分割されて粉々になって真っ暗な底なしの世界に次々に落ちては消えて行ってしまった。
《はいそうです。この列車はアナタ方がご所望していた正真正銘の幽霊列車で、村山台駅に停車したのはあなた方をお乗せするためです。どの車両にご乗車頂いても構いません。好きなところからお乗りください。終点は夕闇が丘駅になります》
私たちは覚悟を決めた!
恐る恐る中へ乗り込むと、車両の中は清潔で内装も傷んでる様子もなかった。座席は古風な感じだけど、しっかりした作りで、二つを一対に向かい合わせになって四人掛けになりそれが整然と並んでいた。
三人それぞれ車内をキョロキョロしながらウロウロしていたけど、やがて一箇所に集まって座った。外を見ると、小型犬の車掌がまだホームに座っていて、私たちに向かってワン!と一声吠えた。そして扉がしまった。
ーそして冒頭に至る。
まるでサンリオキャラクターのような見た目の可愛らしい仔犬の車掌の可愛さに誤魔化された感じで乗り込んだけど、この乗り物は冗談抜きガチの幽霊列車なのかもしれない。だんだんその現実味が増していった。
さっきまで村山台駅にいた私たちは、異界の変化に追いつけずに現実感を何処かに置いて来てしまったかのように、車窓の外をぼうっと見つめるだけだった。
星の存在しない宇宙のような真の暗闇の中を通り過ぎているようで、無限の長さのトンネルの中を走っているような気がしてきた。
それからどのくらい時間が経っただろう。外は相変わらず漆黒の景色が続いた。しかし突如として前方の方から明るく光が差し込んでくるがわかった。