第１話

梶田さんは一生懸命な人だった。梶田さんは先月、私の部署にやって来た。勤務期間は1ヶ月。彼女の異動先の部署の受け入れ体制がまだ整っていないため、それまでの間ここで勤務して貰う。MGは私にそう説明した。

「で、悪いんだけど、仕事を教えてやってほしい」
「…わかりました」

MGが去った後、私は深く溜息をついた。はぁ、またか。新人は私が面倒を見る事になっている。なぜだか、私が親切に接しているように見えるらしいのである。

親切？ いやいや、もの凄く気を遣っているだけだ。例えばお昼。私は一人でいたい人間なのだが、自分から輪に入れないタイプの新人の場合、ぼっちになってしまう。そこで、お昼一緒にどう？ などと誘う。話に詰まると、自分の失敗談なんかをして、間を持たせる。後でどっと疲れる。…

梶田さんはひとつ年下だった。そして梶田さんは輪に入れないタイプだった。私は毎日、梶田さんとランチを共にした。梶田さんは物静かで、あまり喋らない人だった。

「もしかして一人が好き？ もしそうなら気を遣わないでね。私も一人って結構平気だし」

私は梶田さんを傷つけないように注意しながら、笑顔で言った。

「いいえ、とんでもないです。藤本さんって楽しくて、ご一緒できて嬉しいです」

…本当は、たまには一人になりたい。自分ばかり喋りっぱなしで、疲れる。…。