第1話

文字数 526文字

俺の名は武御雷明(たけみかずちあきら)、大阪の一流校に通う男子高生だ。

成績優秀、スポーツ万能、ルックス☆イケメン。カラオケで歌を歌えば女も男もうっとり聴き惚れる。調理実習でオムレツを作れば、フランス料理人の息子が涙を流して悔しがる。生来のカリスマ性があり、俺の周りには取り巻く人間が絶えない。趣味は読書とマラソンで、努力をしているという自覚もないまま、好きなことをしているだけで、一般人との格差は開くばかりだ。父親は一流商社のサラリーマン、母は経産省のキャリア官僚。

(自分で言うのもなんだが)絵にかいたような完璧さだ。

だが俺には一つ、とんでもない欠点がある。俺は代替品、クローンなのだ。世界最大の巨大企業、天照カンパニー、その総裁のただ一人の御曹司、天照信長の、スペアとして俺は遺伝子操作によって極秘のうちに生み出され、御曹司にもしものことがあったときのために、代替品として育てられてきた。

幼いころから、何の努力もしてこなかった。努力の必要もなかったからだ。努力せずとも、すべてにおいて、はじめから一流だった。だが、そのことを誇りに思ったことは一度もない。なぜならそれらの並外れた能力はすべて、世界一の遺伝子を持つ男のコピーであることに起因するからだ。
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