第4話 みがわり -3-

文字数 387文字

 意味が分からなかった。良夫は自分だ。ここにいる。それとも、自分と同名の同級生でもいるのだろうか。

「良夫くんって友達? ここには良夫くんっていう子はいないよ」

 すると、少年は涙を浮かべて顔を歪めた。

「良夫くんが、僕の代わりに連れてかれたの。ごめんなさい。ごめんなさい」

 とうとう堰を切ったように泣き出してしまった。良夫は突然のことで困惑したが、自宅の玄関先で泣かれていては世間体が良くない。ひとまず家の中に招き入れて、泣き止むまで待つことにした。

 少年はひとしきり泣いて落ち着いた。彼の正面に座り、目を赤くした少年の顔を観察する。

 どこかで見た顔だ。会社のイベントに子供を連れてくる社員もいるから、その時にでも見たのだろうか。

 いや、違う。そんな最近のことじゃない。もっと昔……。だめだ、思い出せない。良夫はひとまず、彼の名前を訊いてみた。

 少年は答えた。

「康太。高木康太」
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