第12話 かくしんぼ -2-

文字数 514文字

 何だと。すぐに行こう。――その言葉は出なかった。良夫の何かが、そこへ行くのを拒否している。

「どうしたの? 悠馬くん、連れて帰るんでしょ」

 良夫は頭を振って不安を振り払い、康太を連れて岩へと向かった。一歩近づくたびに、鈍い痛みが強くなる。不快な痛みと闘いながらも、良夫は岩の周りを観察する。

「何もないか……」

 何もないなら早く立ち去ろう。そう思って照らした先。草むらの中に、小さい脚が見えた。ズボンに、染み。おやつのプリンをこぼしてついた染みと同じ位置。

「ゆ、悠馬……?」

 良夫は急いで草むらに走り、ライトを照らした。心臓の位置が真っ赤に染まり、生を失った悠馬の姿がそこにあった。

「ゆ、ま……? 悠馬!」

 悠馬を抱き起す。だが、既に冷たくなっている。

「きっと、みがわりを選ばなかったんだよ」

 康太が悠馬を見下ろしながら言った。

「みがわりを選ばないと、心臓をとられちゃうから」

「な、何言ってんだ……」

「みがわりを差し出せば、助かる。でも、差し出さなかったら、自分の魂と心臓をとられちゃうんだ。しん坊に」

 悠馬くんはいい子だね。そうつぶやく康太に、良夫は恐怖を感じた。さっきまで怖がっていたのに、今は不気味な雰囲気を醸し出している。
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