第4話

文字数 281文字

 これは、終電だ。
 最終駅まで、あとどれほどだろう。

 人が――次なる男が乗り込んで来ることは。

 きっと来る。

 わたしは確信している。
 これまでもそうだったように、次の宿主はやってきて、きっとわたしを抱き上げるはずである。
 わたしを入手し、他の誰にも渡したくはない。
 わたしを愛で続ける事さえできれば、他には何もいらないと強烈に願うはずなのである。

 許せないと憎悪するほどに、わたしを乞い求めるはずなのである。

 わたしは、美しい。
 だから、なにも怖くはない。

 ゆっくりと発車した汽車に揺られながら、わたしはおもむろに待つのだった。
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