第五章(2) 『ウイッチ・オブ・ザ・リビングデッド』

文字数 7,930文字

「そこまでだ! 魔女めッ!」

突然、渡り廊下の先から声が聞こえた。
 怪物はその声に反応して顔を向ける。 メガネとライカも声の主を見る。

 そこに居たのは――英国風のスーツに身を包んだ……美青年だった。
「邪悪なる魔女よ! この聖なる聖水で、討ち滅ぼさん!」
青年は手に持つ小瓶を化け物に投げる!
小瓶は怪物に当たって粉々に割れ、中の液体が一気に怪物と下の二人にかかった。
小瓶のサイズとは裏腹に、中に入っていた液体は非常に広範囲に拡散しまるでシャワーのように降りかかったッ!

「グガォォオオオオッッッ!?」
 まさに断末魔と呼ぶにふさわしい怪物の絶叫と共に、怪物はその姿を消した……。

「た……助かった……?」
 メガネはようやく身の安全を実感する。
「大丈夫ですか?」
 青年が心配そうに声を掛けてくる。
 メガネとライカはゆっくりと立ち上がり、青年を見た。
「……!?」
 う、美しい……。
 青年はメガネの直球どストライクな外見をしていた。
 純粋で綺麗な瞳。 まるで子供のような愛らしい顔と声。 間違いない……ショタだ!
 メガネの脳内にショタの三文字が埋め尽くされる!

「ショタ……?」
「はい?」
「あ……あなたがもしかして、斎藤蘭……蘭くん!?」
 メガネは勢いよく立ち上がると青年に詰め寄る。
「ええ? あ……そうです。 ぼくが蘭ですけど……」
 蘭と名乗った青年は訝し気に答える。
「子供!?」
「大人です」
「女の子!?」
「男です」
「男の娘!?」
「成人してます」
 今まで創作界隈でしか見たことが無かった本物のショタに心を震わせるメガネ。 しっかりしろ。
「あなたたち……どこから来たんですか? こんな所で何を?」
「なにって、蘭くんを探しに来たんだよ! ほら! お姉さんと一緒に帰ろ!」
「アイちゃん!? ちょ! 落ち着きなさい~!」
 今にも蘭に抱き着きそうなメガネをライカは引き留める。

「ふう……斎藤さん? あなたを探しに来ました。 キャットとかいうアンドロイドにそそのかされてね。 あなたが元居た世界に帰りましょう?」
 ライカが冷静に説明する。
「あ、その前にお姉さんたち、体を拭いた方が良いかもしれません……」
「へ?」
 二人は体を見る。 さっきの小瓶から出た液体だろうか……体中にヌメヌメした液体が絡みついているではないか。 ライカに至ってはワンピースが濡れて下着が透けて見えてしまっている。
「な、なんやこれぇ~!?」
「すみません。 魔女だけを狙って弱点である聖水を投げたんですが、あなた達にもかかってしまったようです。 でも心配しないでください。 人間には害はありません」
「だいじょうぶだいじょうぶ! 助けてくれてありがとね!」
 メガネは絶叫するライカを尻目に蘭へ抱きついた。
「あの……拭いてからにしてくれませんか?」
≪メガネさん聞こえてますか!? 視聴者数が、視聴者数が……増え続けていますぅう!≫
 森田の興奮する声は、メガネには届いていなかった。


 三人は一旦教会の一室に避難した。 メガネとライカはタオルを被りながら、蘭がつけた暖炉で服と体を温めている。
「最悪……シャワー浴びたい……」
 青白い顔をしながらライカは体を震わせていた。

「という事は、メガネさんとライカさんはCATの指示で?」
「そういうこと。 三人の研究員をそれぞれの世界で見つけて連れ帰って来ないと、私たちは屋敷から出られないってわけ」
 一通り説明を終えると、蘭は顎に手を当てて考え込む。
「ねえ蘭くん。 どうして帰らなかったの? しかも一ヶ月もの間……何か事情が?」
「帰りたくなかったからです」
「ハア!? 何言うとんやワレぇ!?」
「ライカさん、配信中です」
 ライカは慌てて口調を元に戻す。
「……どうしてそうお考えでぇ? というより、他の研究員の世界に行ったはずなのに何故あなたはこの世界に来てしまったの?」
 蘭は椅子から立ち上がると、深刻そうな顔をする。
「最初は僕もすぐ帰ろうと思っていました。 でも、この『ドア』はそう簡単にいく代物ではなかったんです」
「どういうことなの?」

「人間誰しも現実逃避をしてしまうものです。 今の自分ではない、幻想の自分になりたいと。 特に僕たちが今まで住んでいた現実という世界は上手くいかないものです。 生きることも、望んだことも、思い通りにはいきません」
 蘭は虚空を見つめる。 それは儚げで、とても美しい……と、メガネは思った。

「『ドア』は、人の精神を読み取って世界に作用させてしまうんです。 簡単に言うと、自分が望んだもっとも近い異世界へと勝手に連れて行ってしまう性質を持っているんです」
「つまり、この世界は蘭くんのもっとも行きたかった世界だったってこと?」
「そうです。 僕が望んだ異世界が、ここなんです。 他の研究員たちもそれが作用してしまい、今回のような事故が連鎖的に起こってしまいました。 すみません」

 自分の精神に反応して異世界に取り込まれたという事か……。 だが自分たちは無事にこの蘭が居る世界に来れた。 それは何故だろう。 メガネは蘭に聞いてみた。
「それは、イメージの強さです。 僕たちはこの職業柄、様々な世界の可能性を日々夢想しています。 僕たちの現実世界のすぐ隣には、僕たちが望んだあんな世界やこんな世界がある。 早くその世界に行ってみたい。 そういうイメージが大きくなりすぎて、『ドア』がそれを検知してしまうんです。 二人が無事にこの世界に来れたのは、まだそのイメージが薄かったからでしょうね」

「斎藤さん、こんなクソ怖い世界に行きたいとか悪趣味にもほどがありましてよ?」
 ライカは配信を意識しすぎてか、キャラが少しブレてしまっていた。
「分かっています。 でも、自分自身が望むものなんて他人には分からないものですよね。 僕はこの世界を他の人にも知ってほしいとは思いませんし、良さを共感してほしいとも思っていません。 僕の場合はたまたま子供の頃から遊んでいたゲームが好きで、今回その世界に近いココに来た……それだけです」
 蘭の言葉に、メガネは思い出す。 そういえば日記帳に似たような文面を見つけたな。
「待って蘭くん。 もしかしてこの日記帳を書いたのって……」
 メガネはここに来る発端となった日記帳を取り出して蘭に見せた。
蘭は日記帳を見ると驚いた表情をする。
「これ、僕の日記帳じゃないですか! どこでこれを?」
「キャットが屋敷に誰かをおびき寄せるために外へ捨てたものだよ。 これのお陰で、私は君に会えた」
 メガネは目をキラキラさせながら言う。
「ああ、はい……それはそれは……」
 蘭は顔を引きつらせながら日記帳をペラペラとめくった。

「あれ? 記録モードになってる……しかも小説モードだ」
「記録モード?」
「はい、この日記帳……Ai搭載の自動筆記デジタル日記帳なんですよ」
「なんやその機能!?」
 ライカのツッコミが静かな室内に反響する。

「普通の日記帳じゃないってこと?」
「そうです。 ある知り合いが開発中の新型電子日記帳を、僕がお試しで使わせてもらってたんです。 普通日記ってその日にあった出来事をただ淡々と書いていくだけのものじゃないですか。 この日記帳は自分で書く必要がなく、自動で書いてくれるんですよ」
 便利な機能だとメガネは思った。
「Aiが人間の脳波や事象を分析してその状況を文章として分かりやすく記述してくれるんです。 ……ほら、僕の書いたページの後から、メガネさんを主軸にしてる文章になってますよ。 まるで小説ですね」
 どれどれ……メガネは日記帳を受け取ると二ページ目から読み始める。

「うわ……本当だ! 編集部でこの日記帳を森田くんから受け取った時から細かく書かれてる! おもしろ!」
 メガネはその後もしばらく読み進めたが、ライカが「見せて見せて!」と近づいてきた瞬間にバタンッと日記帳を閉じた。
「アイちゃんどうしたの?」
「いやいや、ライカさん! そんなことより、早くこんな所から出ましょう! で、蘭くんを無事に連れ戻さないと!」
 ライカは釈然としないが、了承する。

「悪いけど斎藤さん。 私たち警察呼んだから!」
 ライカがエッヘンという顔で蘭を見る。
「え、警察ですか?」
「そうよぉ? 実は私たち今、全世界にネットでライブ配信をしててね? このドローンカメラに向かってさっきみんなに通報をお願いした――」
「ライカさん!」
 まさかのライカが言うとは思わなかった。 口裏を合わせておけばよかったとメガネは心底後悔する。

「残念ですが、警察は呼べません」
「どうして?」
「屋敷のセキュリティは完璧です。 このAi搭載のドローンやメガネさんのモノクル、そしてこの日記帳に至るまで、この屋敷に入った瞬間にハッキングされて屋敷のセキュリティシステムに掌握されます。 それらの映像や資料は外へ情報が流失しないように、居場所であったり、技術が流出してしまうような重要なものに対してはカバー映像や伏字を用いて徹底的に特定できないようにするんです」
「そんな!?」
 ライカはメガネが持っている日記帳をひったくるように取ると、最新のページから数ページ前まで遡って自分がここの位置情報を視聴者に伝えている行を見る。
 メガネはちょっとだけハラハラしていた。

「ほ……本当だぁ……!」
 位置情報を伝えるセリフには、伏字がふんだんに使われていた。
「ん? アイちゃん何でハラハラして――」
 メガネはバッと日記帳を取る!

「配信映像も同じです。 たぶんみんな、映画やドラマのような気分でこの映像を見ているはず。 Aiがリアルタイムで数秒先の展開まで計算して非現実的な映像を作り出しますから、誰も信じないし通報なんてしないでしょう。 警察も動きませんよ」
 がっくりと項垂れるライカ。 しかしムクっと顔を上げるとメガネに行った。
「そうだ! 森田さんは!? 森田さんから警察に通報してもらえれば――」
「ライカさん落ち着いてください! いいですか? 私たちが後二人、研究員を救い出さなければ、研究員はそのまんまですよ? ずっと助け出せないままです。 私たちだけ逃げ出すのは、それから考えませんか?」
「でもアイちゃん~」
 ライカは泣きそうな顔でメガネを見る。 メガネはライカへそっと耳打ちする。
「配信中です……」
 その言葉を聞いた途端、ライカは立ち上がって声高々に宣言する!
「後二人の研究員、必ず助けなきゃ! 安心してみんな、私たちが必ず助け出すから!」
 あぁ……扱いやすい女だなあ、とメガネは思った。 そしてこの思いもきっと日記帳に書き込まれるんだろうなあと思った。

「てわけで、斎藤さん! そうと決まれば早く帰りましょう!」
「いえ、その前に……やらなくてはいけないことがあります」
 蘭は立ち上がって、さっき怪物に投げつけたものと同じ小瓶を見せる。
「あの魔女を……倒さないと」
「え……どういう……?」
「さっき二人を襲った怪物は魔女の手下です。 魔女は……恐ろしい存在です。 人々を黒魔術によってゾンビにして、この世界を自分の配下で埋め尽くそうとしているんです。 なんとしても止めなければいけません!」
 ライカは開いた口が塞がらない。 何を言ってるんだこいつは? といった顔で蘭を見つめる。
「約束したんです。 魔女の追撃を逃れ、魔女を倒すために研究していた博士、ロバートと! この聖水は、博士が十年間研究を重ねてようやく生み出した、魔女を倒す薬です! ロバートは僕にこの薬を託した後、魔女に掴まってゾンビに変えられてしまいました……。 魔女を倒せば、ゾンビの呪いも解けてみんな元通りになれるんです! ですからどうか――」
「あ~はいはい~それは大層な決意ですねぇ斎藤さん~。 でも私たちはあなたの趣味に付き合ってる暇はないんですよぉ~。 こんなところ早く出たいしシャワー浴びたいし明日は配信もしなくちゃいけないしあなたの好奇心に付き合ってる暇は――」
「しょうがないな……蘭くんの満足するまで、私も協力するよ」
「アイちゃん~!? なんかさっきから斎藤さんに甘くないですかぁ!?」
 メガネはきょとんとした顔をする。
「いや、そんなことは? てかライカさんさっきの話聞いてました? こんな地獄みたいな世界が、あと少しで終わると考えたらちょっと協力してあげたいなとか思いません? 普通」
「ええ……うう……」
 思わない。 ライカは心底そう思った……しかし。 配信中という呪いが彼女を苦しめる。
 何か物申したければ配信の音声をオフにしてもらえればいいだけなのだが、音声オフ機能がある事を彼女はここまでの災難で頭からすっぽり忘れてしまっていたのだ。

 沈黙は肯定。 蘭はライカも了承してくれたのだと勘違いした。
「ありがとうございます! ライカさん! そしてメガネさん! 時間は取らせません。 魔女の本体は、『ドア』の近くの火柱にあります。 ゾンビたちをかいくぐり、あの炎の柱にこの小瓶を投げ入れれば、魔女は倒せます!」
「かい……くぐる、やて?」
 ライカの頭は絶望で埋め尽くされる。

「さあ! さっそく行きましょう! 大丈夫! 僕についてくれば安心です」
「行こう行こう!」
 物凄い軽いノリで蘭に付いていくメガネに困惑しながら、ライカも何とか二人の後を追おうとする。
「ちょ……二人ともぉ……うッ」
 ライカは急にその場に倒れた。

「ら、ライカさん!?」
 メガネがすぐに駆け寄り、ライカを抱きかかえる。
「どうしたんですかライカさん!? 怪我!?」
「う……うぅ……」
 ライカは苦悶の表情でうめき声をあげる。
「ちょっとどいてくださいッ!」
 蘭は慌てた様子でメガネを押しのけてライカを抱き寄せる。
「まずい……! 太ももの辺りを見てください! 引っかかれてる!」
 破れた裾から出ている太ももを見た。 確かに、ひっかき傷がある。 恐らくさっきゾンビにやられたものだろう。
「もしかして、嚙まれたり引っかかれたりすると感染する……的な?」
「そうです……」
 蘭の表情は深刻だ。 かなりまずい事なのだろう。
「ど、どうすればいいの!? 助ける方法は!?」
「安心してください……あの手を使えば……!」
「あの手……?」

蘭はおもむろにライカの唇へキスをした。
「ええええええええええ!?」
 メガネの心臓はショックで止まりそうになる……。

「ん……?」
 しばらくその状態が続き、ライカが目を開いた。 そして唇の感触も十分に伝わり――。
ドガッ! 鈍い音が響きわたり蘭が吹っ飛ぶ。 ライカの怒りの拳が蘭の体へ放たれた。
「なにさらすんじゃこのクソガキがぁあああああッッッ!?」
「蘭くんえええええええええ!?」


「……無事で、何よりです……」
 腫れたほっぺを優しくさすりながら、蘭は涙目で言う。
「僕の体には何故かゾンビ耐性があって、ゾンビ化してる人間にキスをすると元に戻せるんです……」
「まあ状況が状況や。 でも今度キスしたらただじゃ済まんから覚悟しぃや!」
 やばい、怖い。 メガネのライカを見る目が少しだけ変わった……と同時に、私も引っかかれとけば良かった~と少し後悔するメガネであった。

{ライカちゃん強烈すぎるw} {アニメみたいにぶっ飛ばされたw} {おれも殴ってくれ}


 それから何とか三人は火柱の広場までやってくる。
「周りにゾンビが居ますが、一気に走ってこの小瓶を炎の中に入れます! その時点でみんなの呪いが解けるでしょう! 問題はそのあと!」
「そのあと?」
「魔女の本体が登場するはずです。 そしたら、あれを使って倒します!」
 蘭が指さすその先にあったのは――ガトリング砲だった。 何故か広場の端に火柱の方を向いて設置されている。
「聖なるガトリング砲です!」
 これ以上ないほどドヤ顔で言う蘭。
「あのガトリング砲の弾は銀で出来ているんです。 それなら、邪悪なる魔女も討ち滅ぼすことができます!」
「アイちゃん、この異世界さ……なんか色々混ざってない?」
「シッ……! ご都合主義にしないと色々破綻しちゃう世界もあるんで、それは言わない約束です……!」

「さあ! 準備はいいですか二人とも!」
 蘭はメガネとライカの顔を見合わせる。 二人は無言でうなずいた。
「僕に続いて……行くぞぉぉお!」
 三人は火柱へ向かって全速力で駆け出す!
 ゾンビたちも三人に気づき、走り寄ってくる!

 不意を突かれたゾンビたちは火柱への蘭たちの接近を許してしまう!
「よし! 今だッ!」
 蘭は叫ぶと、小瓶を野球の投手のように一直線に投げた!
 パリンッ! 炎の中で小瓶が割れる! 炎は赤から黒に変わり、中からこの世のものとは思えない咆哮が聞こえる!
「やった! これで魔女の本体が現れます! ガトリング砲を!」
 炎はその形を変えておぞましい肉の塊のような姿になる。
その塊には無数の目玉が付いており、目玉すべてが三人をぎろりと睨んだ!
ガトリング砲へと向かう三人へ向けて、塊から伸びた鋭い触手のようなものを伸ばす!
「ぎゃぁああああ!」
メガネが触手に絡められ、上空へと持ち上げられてしまう!
「ぎゃぁああきもいきもいきもいきもいッ!」
 メガネは触手を振りほどこうとするが、その力は凄まじく逃れることが出来ない!
「アイちゃんッ!」
「うわぁああああ!?」
 続いて蘭も触手に絡めとられて空中へ持ち上げられてしまった!
「お前もなに掴まってんねんッ!」
 なぜか蘭にだけは厳しいライカ!

「ライカさん! お願いします! ガトリング砲を!」
 蘭が空中でぶんぶん揺さぶられながらライカへ叫ぶ。
「くぅおんのぉおおお!」
 魔女は二人を捕まえて満足そうにしている。 ライカはその隙を逃さなかった!
 ガトリング砲の台座に素早く座り、撃ち方はよく分からなかったが何となく発砲できそうなスイッチを押す!
 銃身が回転し、ガトリング砲の銃口から弾丸が何発も発射される!
「よし! いけるでぇええ!」
 扱い方は分からなかったが、とりあえず撃てることは分かったので次は狙いを定める。
 持ち手を動かし、撃ちながら軌道を修正する。
「斎藤さん! あの目を狙えばいいんやな!?」
 ライカはいかにも弱点そうな魔女の無数の目玉を撃ち抜きまくりながら聞く。
「ライカさん!」
「なに!」
「目玉は特に弱点じゃありません!」
「紛らわしいわぁあああ!」
 絶叫しながらライカは魔女へ何千発もの銃弾を浴びせた。
 そして――。
「グボォォオオオオッ!」
 魔女はおぞましい咆哮をあげながら爆散する! メガネと蘭はその衝撃で地面へと投げ落とされたが、幸い無傷で着地できた。
怪物が爆散した後に残ったのは、朝日に照らされた街の風景だった……。


……それからどれだけ過ぎただろうか。
かつてゾンビだった街の人々が意識を取り戻してゆっくりと立ち上がり、三人を見る。
その一瞬後に大歓声が起き、三人の元へ今度は人として集う。
三人は街の人々によって抱えられると、歓声と共に胴上げされる。

「「俺たちの世界を! 魔女から救ってくれてありがとう!」」
 街の人々の歓声はしばらく止むことはなかった。


「メガネさん、ライカさん」
 蘭は改めて二人の前に立つ。
「ありがとうございます。 二人が居なかったらこの世界を救えませんでした。 感謝してもしきれません」
 蘭は深々と頭を下げる。
「良いんだよぉ蘭くん! 困ってる時は、お互い様!」
 メガネがニヤニヤしながら蘭の肩を叩く。
「早く帰ろうよぉ~! もうここでやることは終わったでしょ~?」
 ライカは『ドア』の前でスタンバっていた。
「そうですね!」
 蘭は朝日を見る。 太陽は、希望の明日へ向けて堂々と輝いていた……。
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