第2話

文字数 561文字

 朱里が彼氏と旅行に行ってから、二週間が経った。
 本当に何もない二週間だった。午前中は水泳部の練習に出て、午後は家で漫画を読んで過ごした。時々、思い出したように課題を進めた。
 退屈な夏休み。
 しばらく考えているうちに、退屈さの原因に思い当たった。朱里が家に遊びに来ないからだ。彼氏ができる前は、一週間に二回程度は遊びに来ていた。それがこの二週間は、遊びに来るどころか連絡さえ入れてこない。もっとも、遊びに来ると言っても、二人でゲームか漫画を触るだけのつまらない習慣だけど。それはそれで僕たちは楽しんでいたのだ。あるいは、楽しんでいたのは僕だけだったのかもしれない。何もない二週間。

 二週間?

 二週間という期間は、高校生の旅行にしては長すぎやしないだろうか? そもそも彼女は、どこに旅行に行ったのだろう。それ以前に僕は、彼氏がどんな男なのかさえ知らない。彼女は二週間も旅行できるほど小遣いをもらっていただろうか。旅行の費用が彼氏持ちだとしたら、相手は高校生じゃないのだろうか? 大学生かもしれないし、もしかしたら社会人かもしれない。
 仕方なく、僕は朱里に電話をかけた。心配しいだと思われるのは癪だけれど、こうも気になってはどうしようもない。着信メロディは陽気な音を奏でたあとで、前触れもなく途切れた。彼女は電話に出なかった。
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