第91話 旅立ち

文字数 771文字

 エサルが事切れたのを確認すると、サラは狐に戻ったその死骸を担ぐ。リクがひょこっと横の部屋から顔を出した。
「これで任務は終わり?」
 サラはうなずく。
「そうね……私が依頼された分は全て終わった……あとはラビルを仲間がどうするか……」
 そういうとサラはリクを連れてその場を後にした。サラは一通りの荷物を持って、町の出口に向かった。すると出口付近で、マリウスが現れる。
「サラさん……色々とありがとうございました……」
 近くにはデルアートもいる。サラはマリウスを見て表情が緩む。
「あなたとは直接話したことはなかったなのに……。たくさん話してきた気分です」
 マリウスはうなずく。
「僕もなんで知らない人がここまで熱心にしてくれるのか不思議でした」
「私も正直言うと、ああしたのかよくわかっていません……きっと町長さんのおかげですかね……。必死にあなたを守ろうとしていた事を、記憶を通じて知ってしまったから……」
 デルアートはただ頭を下げるだけだった。
「もう体は平気なんですか?」
 デルアートはうなずく。
「私はかすり傷でしたから……。今回は本当に助かりました。獣退治だけではなく、この子も救ってもらった……」
 サラは首を振る。
「私はその時にしたかった事をしただけです。恩など感じないでください」
 サラにとってそれはある種の本音だった。少し湿っぽくなったのを感じてサラは話題を変える。
「町長を降りられると聞きました。今回の件が原因でですか?」
 デルアートはうなずく。
「私は私情を業務に持ち込みました……それにどの道交代の時期なんですよ。」
 マリウスが口を挟む。
「まだ平均任期には達してないのに……」
「すぐ降りるわけじゃないさ……新しい人間を探す必要もあるしな……」
 デルアートは優しい笑顔をマリウスに向けていた。サラは少し安心すると、リクを連れて町を後にした。
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