勇者の携帯

文字数 1,234文字

TRRRRRR……

TRRRRRR……

携帯が鳴っているな……

携帯を手に取り電話に出ると


相手は人間の居住エリアにいた

見習い魔道士の少年、テトだった

勇者様、大変です

魔王軍が

こっちに向かって

進軍をはじめましたっ

よし、わかった

ちゃんと、

準備はしてあるだろうな?

も、もちろんです!

何故、こんな異世界なのに

携帯で会話などをしているかと言うと……


大陸の東側、人間が住むエリア


そこにはほとんど

子供と年寄りしかいない

それでも自称見習い魔道士のテトは

新しい勇者である俺がやって来てから


なんとか勇者の力になろうと


同じ年代の見習い魔道士を集め、

少年少女魔道士団なるものを結成した

少しでも、勇者様の役に立とうよ
うん!
うん
よっしゃぁっ!

見習い魔道士と言っても


この世界では、

ロクに魔法を指導出来るような人材は

すべて魔王軍との戦いで戦死しており

子供達が互いに教えあったり


ほぼ独学で魔法の訓練をしている子供達ばかりらしいが

魔道士と言えば、

老人というイメージもあるが


そういう戦力として

役に立ちそうな年寄りは

みんな既に死んでいた


たまたま人間エリアに戻った際に

そのことを知った俺も

ちょうど雑用の手が欲しいと思っていたので


とりあえず連絡が取れるように

転移強奪して携帯をメンバー全員に配布

すごいっ!
カッコいい!

もちろん携帯だけあっても

電気やアンテナ基地局がなければ使る筈もない

電気に関しては自家発電機を転移強奪


と言っても自転車を漕いで

発電させるタイプなのだが

何の役にも立たない年寄りには


交代で自転車を漕ぐ係りをやらせ、

常に蓄電させている

これはなかなか、しんどいのぉ
もう交替か?

さっきはじめたばかりじゃろ

こっちも、はよ替ってくれ
まぁ、爺と婆の健康のためには丁度いい

さすがにアンテナ基地局だけは

どうにもならないので


そこは俺が創造した能力を使っており

まぁ、別に

携帯じゃなくてよくないか?


というぐらいの、ゆるい

形式ばかりの携帯通話ではあった

まぁ、でもこういうのは魔法と一緒で


強いイメージが大事だからな


以前の奇襲で敵の通信網が

ほぼザルであることを知った俺は

もし他の人間達と連携するのであれば

通信網の優位性が役に立つであろうと

ずっと考えていた

人間世界の現代兵器を使った戦争でも

一番先に叩くのは通信施設であり


本来であればそれ程重要な役割の筈なのだ

そして、俺は


最初の電撃作戦で敵の拠点を叩き

最前線のラインを後退させて

出来上がったフリースペース

そこを少年少女魔道士達に千里眼で

四六時中監視させ


魔王軍が進軍して来たら

携帯に電話をよこせと伝えておいた

限られたスペースであれば


子供達であっても昼夜を問わず

監視することも出来なくはない

じゃあ、今度

あたし替るね

あ、ありがとう
あたし夜番だから

俺のやり方に腹を立て


報復として人間エリアに

魔王軍を侵攻させるであろうことは予測していたし

あのフリースペースこそは


敵軍を迎え撃つための

迎撃ポイントでもあるのだ

それとは別に


迎撃のための準備を

少年少女魔道士団に命じておいたから

その成果が試される時でもあるかな
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