下らない魔法
文字数 1,982文字
目が眩み、目標を見失いつつも、鮮やかに肢体をコントロールして着地する女勇者。
しかし、その頭上に巨大な岩のような拳が振りかかる。
しかし、その頭上に巨大な岩のような拳が振りかかる。
警告の叫びと共に、背後から走り込んできた白銀のフルアーマーの男が、彼女の前に立った。
素早く唱えた祈祷に反応して、彼の手にする大盾と聖鉾が輝き、見えない力で巨大な岩石拳骨の着弾をはね返す。
ティアリスは仲間に礼を言った。
聖騎士ドロス、共に旅する冒険者。短く刈った金髪に甘いマスクの美青年だ。聖なる信仰の力を使って鉄壁の防御を誇る頼もしい前衛である。
聖騎士ドロス、共に旅する冒険者。短く刈った金髪に甘いマスクの美青年だ。聖なる信仰の力を使って鉄壁の防御を誇る頼もしい前衛である。
いきりたつ女勇者に、ドロスが慌てるなと首を振った。
冷静沈着な彼は的確な状況判断でも支えてくれる。
魔力を得て動き出した無数の石像が、のそり、のそりと不気味に迫り来る。
と、迫る石造の群れに叩き込まれる二本の大斧。
荒々しい雄叫びと共に怪物の群れに突っ込んだのは巨漢の蛮人、ブリックだ。
両手に持った戦斧を休むことなく竜巻のように振り回し、当たるを幸い敵を砕き散らす。
一糸まとわぬ上半身の隆々たる筋肉、パーティきってのパワーファイターだ。
一糸まとわぬ上半身の隆々たる筋肉、パーティきってのパワーファイターだ。
続いて飛び出したのは全身を黒装束に包んだ男だった。蛮人の肩を蹴り、くるくるとトンボを切って宙を舞う。
先のティアリスの跳躍も見事だったが、それよりも遥かに高い。
先のティアリスの跳躍も見事だったが、それよりも遥かに高い。
気合と共に天から乱れ撃たれた手裏剣が、ゴーレムの急所である制御石に突き刺さり……ひと呼吸の後、一斉に発火炸裂する。
ボゴオオンッ!
爆炎が上がり、倒れる石像たち。
爆炎が上がり、倒れる石像たち。
危なげなくヒラリと地に舞い降りし彼こそは、古今あらゆる忍術に通じた忍者マスター、スケアクロウ。
その鋭き洞察眼に見破れぬ弱点なし。
……しかし、
その鋭き洞察眼に見破れぬ弱点なし。
……しかし、
狙いが外れていたか一体生き残ったゴーレムが忍者の背後から襲い掛かる。
ティアリスが仲間の危機に飛び出し、間髪入れずに横薙ぎに大剣を払う。
ズッバアアアアッ!
ズッバアアアアッ!
上半身を斬り飛ばされたゴーレムは、残った腰から下をぐらりと揺らし、地響きを立てて地面に崩れ落ちた。
岩をも断つ斬撃、女勇者の豪剣。
そして、鮮やかな連携。
並の冒険者なら一体相手でも手古摺るだろうゴーレムの一団を瞬殺一掃。
彼女たちがこのまま迷宮を走破し、逃げた主を追い詰めるのは時間の問題のはずに思えた。しかし、魔法使いの仕掛けた罠はこれだけではなかった。
そして、鮮やかな連携。
並の冒険者なら一体相手でも手古摺るだろうゴーレムの一団を瞬殺一掃。
彼女たちがこのまま迷宮を走破し、逃げた主を追い詰めるのは時間の問題のはずに思えた。しかし、魔法使いの仕掛けた罠はこれだけではなかった。
礼を言ってスケアクロウが身を起こしたそのとき、肉が弾けるかのような衝撃がティアリスの胸部に炸裂した。
倒れた彼女に駆け寄ったドロスが目を丸くする。
床に仰向けになって身を反らし、悶える女勇者の乳房がはち切れそうな程に膨れ上がって──いや、違う。
膨らんだのは彼女の胸ではなかった。
その部分を覆う黒革のホールターが縮んでいるのだ、それも急激に。
その部分を覆う黒革のホールターが縮んでいるのだ、それも急激に。
みるみるうちにその面積を半分にして、彼女のボリューミーな柔らかい乳肉をはみ出させる。
そればかりではない。
下半身も同様、臀部をすっぽり包み込んでいたパンツが、するするとしぼみゆき、脚の付け根を大きく覗かせた挙句、みちみちと音を立てて股間に食い込んでいく。
そればかりではない。
下半身も同様、臀部をすっぽり包み込んでいたパンツが、するするとしぼみゆき、脚の付け根を大きく覗かせた挙句、みちみちと音を立てて股間に食い込んでいく。
ククッ、気に入って貰えたかな、我が魔法は?
どこからともなく小馬鹿にしたような笑い声が響く。
その鎧は我が配下の魔物と戦えば戦うほど、そのように縮まっていく。
ふざける? フフフフ……はしたない女には躾けが必要。当たり前のことではないかね? 我がもとに辿り着く頃には人並に恥じらいを知る淑女に矯正されていよう。
だが、魔法使いからの応えは返って来なかった。
気遣う仲間に強がりを言ってティアリスは立ち上がった。
そう言って先に立ち、迷宮の奥へと歩を進める。
慌てて追う三人の男たち。
慌てて追う三人の男たち。
彼らの視線が、彼女の露出した下半身──巨大な卵の如き、つるりと滑らかな美尻に吸いついたようになっていることにティアリスは気づいていなかった。