第2話

文字数 1,018文字

 最近はお互い仕事が忙しく、休日は家でゴロゴロと過ごす、いわゆるおうちデートがほとんどだった。

 それに、今年の夏の暑さと言ったら尋常じゃないっ!!

 連日猛暑日を記録しており、昨日は猛暑を通り越して酷暑にまでなったらしい。

 太陽は、私の肌をジリジリと焼くどころか、素早くジュウっと焼いて、それから、蒸し焼きにして旨味を閉じ込めてやる、とでも言いたげに鋭い紫外線と耐え難い熱風を差し向けてくる。

 だから、命の危険を感じる日中はとてもじゃないけれど、出歩く気にはならない。それ故に、お昼間デートは必然的に封印され、冷房の効いた快適空間に篭らざるを得なかったという訳である。

 致し方なく快適空間に篭っていた訳だが、そんな生活が嫌かと聞かれると、決してそう言う訳ではない。

 快適空間でダラダラゴロゴロすることは、至福の喜びだと思っている。

 ……思ってはいるのだが……

 やはり、たまには外に出て映画やショッピングデートがしたくなる。こんなに暑いならプールデートもいいかもなぁと思いつつ、視線を少し下に向けると、大きな肉壁に阻まれた。ダメだ。プールデートは、なしなしなし。

 でも、やっぱりどこかに行きたいよぉ〜という私のわがままで、本日は太陽に負けじとお昼間デートを決行中。

 彼と肩を並べて歩きながら、彼が押している白いフレームの自転車へと目をやる。真新しい光を放つそれはカラカラと小気味良い音を放っている。

「ねぇ、なんで自転車で来たの?」
「え? だって。天気良さそうだったから。最近運動不足だし、気持ちいいかなと思って」

 自転車を押しながら、彼はあっさりとそんなことを言う。

 いやいやいや。天気は良いけど、暑いじゃん。溶けるじゃん!

 私の不服そうな顔に気が付かないのか、彼は良いことを思いついたと声を弾ませる。

「そうだ。今度、サイクリングとかどう?」

 運動不足は否めないけれど、その提案には承服しかねる。この暑いのに体を動かすとか、なんの罰ゲームなんだと思う。

「え〜、いやだよ。暑いもん。今日だって天気は良いけど、紫外線強いし気温も高いから無理すると良くないよ。それに、自転車があったら移動するとき邪魔じゃん」
「まぁ、それはそうだけど。でも、暑い中バスを待つくらいなら自転車で出かければ良いかと思ったんだよ」

 私の指摘に、彼は少し渋い顔をする。

「それに、もともと待ち合わせ場所は映画館だっただろ? 途中で未奈に会って歩くことになるなんて想定外だよ」
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