美しき女処刑執行官

文字数 2,423文字

豚の治世。
後世の史家たちがそう呼び、唾棄してはばからない暗黒の時代。

王都にそびえる巨大な断頭台はその象徴だった。
あっ……ああっイヤッ! 助けて、ママ!
お慈悲を…………ど、どうか娘だけは……
青空に響き渡る喘ぎ混じりの悲鳴。

断頭台に拘束された母娘が、処刑人に取り囲まれて嬲りものにされていた。
い、いやあっ……手を触れないで! ああっ……あっ、あっ……!
なっ、なにをなさるのです! あっ、あ……んあっ!
今、高い壁に囲まれた処刑場の広場には観衆はいない。

一度に数人の首を撥ねる事の出来る幅広の拘束板に、母娘の体は互い違いとなるように固定され、母には娘の、娘には母の、這いつくばり、粗末な囚人服をはだけて突き上げさせられた白い尻と、男たちの挿入による蹂躙が見せつけられている。
思い知ったか、自分たちの罪を……
反省しているなら感じてみせろ!
責めたてる四、五人の男たちは皆、フードつきの処刑人の服を身に着けていたが、その下半身はむき出しだった。
あんっ……ああんっ! ひぐっ……
ううっ……くふぅっ……お、おお……
娘も母親も、同じ栗色の髪を上流階級の女がするように品良く編み上げていた。

女らしい成熟した肉づきの母は、喘ぐ声もどこか艶がある。
それに対して、まだあどけなさの残る娘のほうは、ほっそりとした両脚の間の肉棒の出入りが痛々しい。

とはいえ、共に優美な、しなのある体つき。悲鳴と涙で歪めてはいても、その顔立ちには平民とは思えぬ気品があった。

いったい彼女たちがどんな罪を犯したというのか?
食うに困って強盗殺人とは、それが誇りある良家の子女のする事か!
わっ……私どもはそんな大それたことなどしてはおりません!
濡れ衣です! そのようなこと!
目に涙をためての必死の訴えだったが、処刑人たちに聞く耳はなかった。
どうやら、反省が足りねえようだな。
娘を犯していた男が肉棒を引き抜き、湯気を立てているそれを、すぐ隣の母親の顔の前に突き出す。
おらっ……しゃぶれっ……テメエの生んだ淫売が垂らしたマン汁を、その口で拭うんだよ!
母に突き入れられていた肉棒も、娘の前に差し出された。
お前はこっちのチンポだ! 大好きなママの味だぜ、嬉しいだろ?
いやっ……いやあああっ!
オラッ! 聞き分けの悪いお前の娘に手本を見せてやれよ!
母親の前に立つ処刑人が、母の鼻をつまんで手際よくその形良い唇の奥へと肉棒をねじり込む。
ううっ……おふぅぐぅうぅっ!
お願い、ママに酷いことしないで!
ごちゃごちゃうるせぇっ!
娘の前の処刑人がそのまま肉棒をねじ込んで泣きわめく口を塞いだ。
お……ぷ……ほっ……ほぶっ……
空いた穴はもらったぜ!
残る処刑人たちが我先に濡れそぼつ肉襞を掻き拡げようと飛びつく。
こんなにグショ濡れにしやがって。これじゃあ懲らしめになんねぇぜ!
まったくだ! だらしなくヒクついてんじゃねぇか! ケケケケケッ!
勝手な事を言いながら、めいめいがズブリズブリと肉の処刑棒を突き刺す。
~~~~~~~~~~ッ!
~~~~~~~~~~ッ!
口を塞がれたままの声にならぬ悲鳴。
反省してんなら、腰ぐらい振りやがれ! 親子で動きを合わせろよ!
フヒッ……オッパイもな! せっかくお揃いのデカ乳なんだからよ!
ンンッ! んあっ……お慈悲を!
どうか……ンヒイイッ! アアッ
いつ止むとも知れぬその饗宴は、しかし突然終わりを告げることになった。

シュルルルルッ……カシィーン!

風を切る音と共に飛んできた、いくつもの手錠のような鉄製の輪が男たちの勃起の根元にはまり、拘束する。
うわわっ……!
それは、ただの手錠ではなかった。

小さな刃が取りつけられた携帯式ギロチン錠。

輪に繋がる鎖の先のスイッチひとつで捕えた物を切断できる、この特別性のギロチン錠を操ることができるのは、王都の処刑人の中で只一人。
し……執行長!
ソ……ソライユ様っ!
広場の中央には、ギロチン錠の鎖を束ね持つ女の姿があった。
その背に翻る漆黒のマント、黒衣の下に隠せぬ豊満なバストの隆起、膝丈のロングブーツの中に呑み込まれる、すらりとした長い脚。

目深に被っていたフードが風に払われると、見事なブロンドが渦を巻いて舞い広がった。
……。
肉感的な唇は厳しく閉ざされ、頬は引き締められたまま。長い睫毛の下に陰るその怜悧な眼差しが、静かな怒りを湛えて細められる。
貴様ら……何をしている。
王都にその人ありと名高き、美貌の女処刑執行長、ソライユ・ペルソーヌその人だった。
処刑の執行日は今日ではなかったはずだぞ……その母娘を放してやれ。
険しい声に、男たちがうろたえる。
これは……その……教育を……教育を施しておったのでありましてっ!
こやつらに自分の犯した罪を、身をもって体験させることで、反省を……
明らかにでまかせの見苦しい言い訳は、ソライユのひと睨みで途切れる。
さっさとしろ。さもないと……
ソライユが手にしたギロチン錠の鎖を、じゃらりと鳴らしてみせる。
ヒイイイイイッ!
男たちは情けない悲鳴を上げて即座に母娘を解放し、それを見届けてソライユがギロチン錠を解除すると、皆、一目散に駆け去っていった。

美貌の処刑執行長は、断頭台に上ると、労わるように母娘を助け起こした。
お前たちに着せられていた強盗殺人の罪だが、私が独自に調査した所、他に犯人がいるとこがわかった。したがってお前たちは無実だ。釈放しよう。
ああっ……ありがとうござます!
このご恩は一生忘れません……!
もう大丈夫だ……
感謝の涙を流して抱きつく母娘をソライユもまた優しく抱き返し、落ち着かせるように慰めの言葉を何度も繰り返してやるのだった。

しかし、彼女にはわかっていた。
(また同じように、無実の罪に陥れられる者が出る……)
この母娘たちを始め、無辜の罪の犠牲者は後を絶えない。

腐敗した貴族たちの権力を巡る暗闘。弱者を陥れ、私欲のための手段を選ばぬ謀略の連鎖……。
(その腐った病巣を取り除く事……それこそが人々を救う唯一の手段なのだ)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ソライユ・ペルソーヌ

王都にその人ありと名高き、美貌の女死刑執行長。
正義と公正を愛して腐敗を憎み、冤罪に陥れられた者たちの救済に奔走する。

闇の処刑人

『真夜中の断頭台』と呼ばれる腐敗貴族連続暗殺事件の犯人。
ソライユのもうひとつの顔。

枢機卿

若くして王都を治める権謀術数に長じた美男子。

国務大臣

腐敗貴族の親玉。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色