第2章
文字数 2,790文字
高校に入学して早二ヶ月。私は絶望していた。新たらしい友達は10人ほどできた。クラスでも孤独ではなかった。でも、本当にこの学校生活が辛い。だって、みんな呆れるほどくだらない会話しかしないし、みんな楽しそうなのに、私だけ取り残されてるみたい。側から見たら全然そんなことないかもしれないけど、心の中では、ずっと一人ぽっちなんだ。別に悲劇のヒロインを演じたいわけではないけど、本当に苦しい。
「田中、私ね、話したいことあるの。」「え、なになに。」
この人たちは休み時間の度に私の席に集まってくる。
「どうしたの?」
「あのね、あのね、、彼氏、、、できたんだ!」
そんなこと、なんでいちいち私に言ってくるんだよ。
「え、誰だろう」と、一応聞いてみる。
「同じクラスのね、藤井くん。」
その人は、入学して三週間目に早速私に告白してきた人だった。藤井って男は高校デビューって感じのやつで、芋臭さが抜けない男だったので、即断った。クラスの女子に振られたなんて、あいつが他の人に言いふらすわけもなくこの事実は誰にも知られていない。
「そうなんだ。いいな。高校生って感じで」もう一人の友達が真面目な顔で言っていた。
みんなそんなに恋人が欲しいのか。でも、少し遅れて焦りが湧いてきた。
高校生になって、友達はできたけど一緒にいても何も楽しくないし、彼氏もいないなんて控えめに言って最悪。何かしないと、何かしないととずっと焦っていた。
「そうだ、バイト」
バイトをすればいいじゃないか。バイトをすれば、何かあるかもしれない。
「何いきなり言い出して。」
「私、バイトしようと思う。一緒にしない?」
「いいね、うち田中とバイトできるなら嬉しい」
「私はいいかな、彼氏とたくさん遊びたいし。」
「そっか、じゃ、うちらは早速バイト探そ」
そして私たちは地元の喫茶店のバイトの面接に行った。結果、私だけ受かり、友達は落ちた。
その日からその友達は私に話しかけることが少なくなっていった。
「田中さん、もう上がっていいよ。俺ももう上がるし」
「お疲れ様です。」
「お疲れ」
この男の名はりょう先輩だ。この人は、専門学生らしい。
「ねえ、田中ちゃんさ、明日暇?」
「暇ですよ。バイト出ましょうか?」
「そう、じゃなくてさ、明日、デートでもしたいなと思って、、、」
りょう先輩は少しだけ恥ずかしそうな顔をしていた。
なんてタイミングがいいんだ。このまま彼氏ができたら、私の高校生活もマシなものになるかもしれない。
「しましょう。明日。デート、楽しみだなぁ」
「ほんと!やったぁ、俺、断られたらどうしようと思って今日ずっとドキドキしてた。」
目を逸らしてそんなことを言うこの人のことを、私は少しだけ温かい気持ちになった。
私たちのデートはとてもうまくいった。デートが終わった後、即告白をされた。
もちろん私は了承した。
付き合って数日経ったけど、私は本気で彼のことが好きにはなれなかった。好きじゃないのになんで付き合ったのかって言われると、見栄を張りたかっただけかもしれない。
彼氏ができたからといって、この私の憂鬱な気持ちが消えるはずもなく、今日も変わらず地獄にいるような気分だった。
それでも彼とは一週間に一回は休日に適当に喫茶店や彼の家などでデートをしていた。そして彼と付き合って二ヶ月経っていた。
「なぁ、お前、俺と付き合ってよかったって、思ってる?」
深刻そうな顔で、いきなり言われた。
「なんなのそんな顔して。よかったっていうか、、、なに?どうしたの、、、」
いきなり、彼は泣き始めた、何がなんなのか分からなかった。
「ごめん、俺、ずっと言ってなかったんだけどさ、お前、俺のこと好きじゃないんでしょ、、、こんなこと思いながら付き合ってんのも俺、、、辛いんだよ」
なんなんだ、そんなことか。私もこの人そのことを知っているのに、なんとなく気づいていた。だけどここは白を切るか。
「そんな、ことないよ。そんなことないって。だから泣かないでよ。」
「だって、今だって泣いてても抱きしめて慰めてもくれないじゃんか!」
なんだこいつは、乙女みたいなこと言いやがって。気持ち悪い。
「別れよ、俺たち。俺、そんなに強くないから耐えられないんだよ」
一瞬、少しだけ私は固まった。この流れ絵で別れを切り出すのはごく自然なことか。
「う、うん、、わかったよ。別れよう。ごめんなんか。私りょうくんのこと、泣かせたかったわけじゃないんだよ。だからごめん」
本当はごめんなんて思ってもなかった。告白してきたのはそっちだし。
「いいよ。そういうの、本当は思ってないんだろ。」
図星だ。こいつはそういう時だけ勘が鋭い。
「じゃぁ、俺たちもう会うこともないし、バイバイ。」
そういうと彼はそそくさと帰っていった。
なんだ。意外とあっけない男だったな。こんなあっけなく私たちの関係は終わったんだ。
「そういえば、明日から夏休みか。」と、なんとなくつぶやいてみた。
夏休みに入り、私はずっと暇をしていた。バイトも入って一ヶ月でやめ、部活は元から入ってもいなかった。
だけど、学校に行かなくていいのって、こんなに気持ちが楽になるんだな。
そして二学期が始まっていった。しかし、私は学校を休んだ。なんてったって、学校に行くのがとっても憂鬱だった。そして、結局二学期初日から三週間も休んでしまった。
「田中さんは、一学期まで学校には元気に通っていたと思うんですけど、、どうしたの?田中さん」 担任の先生が家に来ていた。
「ごめんなさい。なんとなく、行きたくなくて。」
「なんとなくってねぇ、でも今の田中さんはすごく元気がないね、何かあったのかい?」
「いえ、別に何も、でも、、、」
「でも、何?」 先生は俯いている私の顔を覗き込んできた。
「なんか、もう、どうでもいいんです。なんか、もう私ずっと、、、、辛かったんです。でも、誰にも言えなかった。自分でも、それに気づかないようにしてたんだけど、けどやっぱり無理だった」私は涙が出てきた。自分で発言して気づいた、私は、辛かったんだ、ずっと。
「そうなのね。そっか、先生に相談できることならして欲しいんだけど、難しそうなら精神科の先生に相談したらどう?」
「そう、します」
「思春期だからね、辛いこともたくさんあるでしょ。それは、誰にでもあることだよ」
私のこの苦しみを「思春期だから」の一言で済ませてしまうこの人は私の苦しみなんて何にも分かろうとはしてくれないのだろう。イラつく。
本当は精神科に行く予定などなかったのだが、母親に無理やり連れてかれてしまった。
診断は鬱だった。私の今の状況に名前がついたからって、何か変わるわけではないのに。
そして、引きこもり生活を始めて、10ヶ月経っていた。その間に変わったことといえば、高校を辞めたことくらいだ。
「田中、私ね、話したいことあるの。」「え、なになに。」
この人たちは休み時間の度に私の席に集まってくる。
「どうしたの?」
「あのね、あのね、、彼氏、、、できたんだ!」
そんなこと、なんでいちいち私に言ってくるんだよ。
「え、誰だろう」と、一応聞いてみる。
「同じクラスのね、藤井くん。」
その人は、入学して三週間目に早速私に告白してきた人だった。藤井って男は高校デビューって感じのやつで、芋臭さが抜けない男だったので、即断った。クラスの女子に振られたなんて、あいつが他の人に言いふらすわけもなくこの事実は誰にも知られていない。
「そうなんだ。いいな。高校生って感じで」もう一人の友達が真面目な顔で言っていた。
みんなそんなに恋人が欲しいのか。でも、少し遅れて焦りが湧いてきた。
高校生になって、友達はできたけど一緒にいても何も楽しくないし、彼氏もいないなんて控えめに言って最悪。何かしないと、何かしないととずっと焦っていた。
「そうだ、バイト」
バイトをすればいいじゃないか。バイトをすれば、何かあるかもしれない。
「何いきなり言い出して。」
「私、バイトしようと思う。一緒にしない?」
「いいね、うち田中とバイトできるなら嬉しい」
「私はいいかな、彼氏とたくさん遊びたいし。」
「そっか、じゃ、うちらは早速バイト探そ」
そして私たちは地元の喫茶店のバイトの面接に行った。結果、私だけ受かり、友達は落ちた。
その日からその友達は私に話しかけることが少なくなっていった。
「田中さん、もう上がっていいよ。俺ももう上がるし」
「お疲れ様です。」
「お疲れ」
この男の名はりょう先輩だ。この人は、専門学生らしい。
「ねえ、田中ちゃんさ、明日暇?」
「暇ですよ。バイト出ましょうか?」
「そう、じゃなくてさ、明日、デートでもしたいなと思って、、、」
りょう先輩は少しだけ恥ずかしそうな顔をしていた。
なんてタイミングがいいんだ。このまま彼氏ができたら、私の高校生活もマシなものになるかもしれない。
「しましょう。明日。デート、楽しみだなぁ」
「ほんと!やったぁ、俺、断られたらどうしようと思って今日ずっとドキドキしてた。」
目を逸らしてそんなことを言うこの人のことを、私は少しだけ温かい気持ちになった。
私たちのデートはとてもうまくいった。デートが終わった後、即告白をされた。
もちろん私は了承した。
付き合って数日経ったけど、私は本気で彼のことが好きにはなれなかった。好きじゃないのになんで付き合ったのかって言われると、見栄を張りたかっただけかもしれない。
彼氏ができたからといって、この私の憂鬱な気持ちが消えるはずもなく、今日も変わらず地獄にいるような気分だった。
それでも彼とは一週間に一回は休日に適当に喫茶店や彼の家などでデートをしていた。そして彼と付き合って二ヶ月経っていた。
「なぁ、お前、俺と付き合ってよかったって、思ってる?」
深刻そうな顔で、いきなり言われた。
「なんなのそんな顔して。よかったっていうか、、、なに?どうしたの、、、」
いきなり、彼は泣き始めた、何がなんなのか分からなかった。
「ごめん、俺、ずっと言ってなかったんだけどさ、お前、俺のこと好きじゃないんでしょ、、、こんなこと思いながら付き合ってんのも俺、、、辛いんだよ」
なんなんだ、そんなことか。私もこの人そのことを知っているのに、なんとなく気づいていた。だけどここは白を切るか。
「そんな、ことないよ。そんなことないって。だから泣かないでよ。」
「だって、今だって泣いてても抱きしめて慰めてもくれないじゃんか!」
なんだこいつは、乙女みたいなこと言いやがって。気持ち悪い。
「別れよ、俺たち。俺、そんなに強くないから耐えられないんだよ」
一瞬、少しだけ私は固まった。この流れ絵で別れを切り出すのはごく自然なことか。
「う、うん、、わかったよ。別れよう。ごめんなんか。私りょうくんのこと、泣かせたかったわけじゃないんだよ。だからごめん」
本当はごめんなんて思ってもなかった。告白してきたのはそっちだし。
「いいよ。そういうの、本当は思ってないんだろ。」
図星だ。こいつはそういう時だけ勘が鋭い。
「じゃぁ、俺たちもう会うこともないし、バイバイ。」
そういうと彼はそそくさと帰っていった。
なんだ。意外とあっけない男だったな。こんなあっけなく私たちの関係は終わったんだ。
「そういえば、明日から夏休みか。」と、なんとなくつぶやいてみた。
夏休みに入り、私はずっと暇をしていた。バイトも入って一ヶ月でやめ、部活は元から入ってもいなかった。
だけど、学校に行かなくていいのって、こんなに気持ちが楽になるんだな。
そして二学期が始まっていった。しかし、私は学校を休んだ。なんてったって、学校に行くのがとっても憂鬱だった。そして、結局二学期初日から三週間も休んでしまった。
「田中さんは、一学期まで学校には元気に通っていたと思うんですけど、、どうしたの?田中さん」 担任の先生が家に来ていた。
「ごめんなさい。なんとなく、行きたくなくて。」
「なんとなくってねぇ、でも今の田中さんはすごく元気がないね、何かあったのかい?」
「いえ、別に何も、でも、、、」
「でも、何?」 先生は俯いている私の顔を覗き込んできた。
「なんか、もう、どうでもいいんです。なんか、もう私ずっと、、、、辛かったんです。でも、誰にも言えなかった。自分でも、それに気づかないようにしてたんだけど、けどやっぱり無理だった」私は涙が出てきた。自分で発言して気づいた、私は、辛かったんだ、ずっと。
「そうなのね。そっか、先生に相談できることならして欲しいんだけど、難しそうなら精神科の先生に相談したらどう?」
「そう、します」
「思春期だからね、辛いこともたくさんあるでしょ。それは、誰にでもあることだよ」
私のこの苦しみを「思春期だから」の一言で済ませてしまうこの人は私の苦しみなんて何にも分かろうとはしてくれないのだろう。イラつく。
本当は精神科に行く予定などなかったのだが、母親に無理やり連れてかれてしまった。
診断は鬱だった。私の今の状況に名前がついたからって、何か変わるわけではないのに。
そして、引きこもり生活を始めて、10ヶ月経っていた。その間に変わったことといえば、高校を辞めたことくらいだ。