第11話

文字数 397文字

鵜川は飽きもせずに石膏像を木炭紙の上に写していた。

日々あるいは一刻一刻移り変わる光によって、わずかな視線の移動で変化する石膏像のフォルムやディテールは鵜川にとって最大の関心事なのだろう。

そうして、鵜川は彼だけにしか見る事のできない石膏像を描きつづける。

何を描いていいのか見失ってしまった僕は道具を片付け教室を出る。

以前住んでいたアパートの大家の所にいき部屋を借りた。

大家の知り合いのだということで、アパートから近いスナックでバーテンの見習いとして働く事になった。

客は近所の商店街の店主や工場主で、深夜までカラオケで演歌を歌っては帰って行く。

ママは閉店間際に少し顔を見せる程度でほとんど印象に無い。

いつもは、2人の女性によって店はまかなわれている。

客足が引き、この2人の女性がそれぞれ待っていた男の腕にぶら下がって街へ出ていってしまうとその日の営業はおしまいになる。

僕は店を閉めてアパートに帰る。

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