第2話
文字数 933文字
ここ半年程、彼女のマンションに住んで絵を描くこと以外殆ど何もしないでいた。
彼女がどうして僕を部屋に住まわせる気になったのかは知らない。
年齢も知らない。
ただ、なにもせずに絵を描いていられるのは僕にとって好都合だった。
日曜日の昼に近い朝、ベッドで仰向けになったままカーテンの隙間から差し込んでくる陽の光を見ていた。
部屋の中に舞う煙草の煙や埃に陽の光が反射してサラサラとした粒子の様に見える。
光はどんどん窓から流れ込んでいる。
なのに部屋の中では一向にその光が積もって行く様子はない。
航空機のエンジンの音や自動車の走行音が街のうなりの様に遠くに聞こえる。
部屋の中の静かさを際立たせる。
もし今、此処にこうして居る事が夢なら夢からさめた僕はいったい、どこで何をしているのだろう。
夢から覚めた時の自分は今の自分と同じなのだろうか。
これが、今が、この世界が、僕が見続けている永い夢、この脳みそが作り出した偽の世界ではないと、どのようにして説明すれば良いのだろうか。
「私はあなたの夢の産物ではないし、あなたと同じように私も感じたり、考えたりする。私は確かに存在する。」
と彼女は言うだろう。
だけどそう言っている彼女やここにあると信じている世界を見、感じているのは、やはり僕の感覚だ。
そしてそれを僕の脳みそが勝手に作った世界だったら?
この感覚が正しいと証明することは、誰にも出来ない。
仰向けになって見る天井が揺らいでいる。
角膜を覆う水分が動いているのだろう。
彼女が仕事のために部屋を出てから、しばらく白いキャンバスを眺めてぼんやりとする。
何にも、描けない。
何も描こうと言う気にならない。
風景や、人物などを見て描くタイプの絵が嫌いなわけでも、何でもない。
その様な絵ならもう少し楽しんで、いい絵が描けるのかもしれない。
ところがそういう絵を描こうとすると急に嫌になる。
夢中になって描いていることが出来なくなる。
僕自身の強力なエゴイズムが自分を対象としたイメージを絵にすることしか許さないのかもしれない。
しかも、同じ物を何度も描くことが出来ない。
急速に飽きてしまう。
結果的に奇抜なアイデアやシチュエーションを求める事になる
そんな薄っぺらな動機では、すぐに何を描けば良いのか分からなくなってしまう。
彼女がどうして僕を部屋に住まわせる気になったのかは知らない。
年齢も知らない。
ただ、なにもせずに絵を描いていられるのは僕にとって好都合だった。
日曜日の昼に近い朝、ベッドで仰向けになったままカーテンの隙間から差し込んでくる陽の光を見ていた。
部屋の中に舞う煙草の煙や埃に陽の光が反射してサラサラとした粒子の様に見える。
光はどんどん窓から流れ込んでいる。
なのに部屋の中では一向にその光が積もって行く様子はない。
航空機のエンジンの音や自動車の走行音が街のうなりの様に遠くに聞こえる。
部屋の中の静かさを際立たせる。
もし今、此処にこうして居る事が夢なら夢からさめた僕はいったい、どこで何をしているのだろう。
夢から覚めた時の自分は今の自分と同じなのだろうか。
これが、今が、この世界が、僕が見続けている永い夢、この脳みそが作り出した偽の世界ではないと、どのようにして説明すれば良いのだろうか。
「私はあなたの夢の産物ではないし、あなたと同じように私も感じたり、考えたりする。私は確かに存在する。」
と彼女は言うだろう。
だけどそう言っている彼女やここにあると信じている世界を見、感じているのは、やはり僕の感覚だ。
そしてそれを僕の脳みそが勝手に作った世界だったら?
この感覚が正しいと証明することは、誰にも出来ない。
仰向けになって見る天井が揺らいでいる。
角膜を覆う水分が動いているのだろう。
彼女が仕事のために部屋を出てから、しばらく白いキャンバスを眺めてぼんやりとする。
何にも、描けない。
何も描こうと言う気にならない。
風景や、人物などを見て描くタイプの絵が嫌いなわけでも、何でもない。
その様な絵ならもう少し楽しんで、いい絵が描けるのかもしれない。
ところがそういう絵を描こうとすると急に嫌になる。
夢中になって描いていることが出来なくなる。
僕自身の強力なエゴイズムが自分を対象としたイメージを絵にすることしか許さないのかもしれない。
しかも、同じ物を何度も描くことが出来ない。
急速に飽きてしまう。
結果的に奇抜なアイデアやシチュエーションを求める事になる
そんな薄っぺらな動機では、すぐに何を描けば良いのか分からなくなってしまう。