東雲綜合警備保障(シムー目線)

文字数 763文字

 私は

国の大使館員と国立博物館の館長、この国の外務の役人と、わが社の社員数名と卓を囲んでいた。来月から行われる国立博物館の企画展示に、この

国の至宝が展示される。もとより国立博物館のセキュリティを担当しているわが社だが、この度の企画展において(こと)厳重な警備強化をして欲しい展示物があるというのだ。

 (いにしえ)の王族の玉座の天蓋に吊るされていたという、大人の握りこぶし大のダイヤモンドの原石。未研磨なのでカッティングされた物のような輝きは無いが、冴えた光をはね返す美しさを持っている。ダイヤモンドとしての大きさから、その価値は数千億円とも言われているそうだ。確かに至宝だ。だが、このようなものを盗み出したとして販路があるとも思えない。身に付けられるわけでも、見せびらかせるわけでもない。そもそも、カラーストーンを散りばめられた純金細工の美麗な固定台からこれだけを掘り出して加工する意味が有るのだろうか。それでも、最近、この宝石の周囲で不可解なことが起きているらしい。
 厳重に準備したセキュリティ機器が故障するのだという。

 要は、この度の展示期間、24時間体制で生身の人間が警備をせよという要請なのだ。  
人員は準備出来る。それは約束しよう。だが、誰が何の目的でこの宝石を狙っているのかが解らないのは気持ちが悪い。ある国の関係者もそれに苦慮しているようだ。
 普段、現場は社員任せだが、今回ばかりは私も現場に出向いて現物を確認したいものだ。いや、価値のある宝石だから現物を拝みたいというミーハーな好奇心ではない。この宝石の出自が気になるからだ。

 『神が天から下賜たもうたもの』

 はて、どういう意味なのだろうか……。
 それに、精密機器にだけ影響を及ぼすことのできる非破壊兵器を出力自在に操ることのできる者を、私は独りだけ知っている。 
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