夜間飛行(パイ目線)

文字数 705文字

「はぁい! 東雲(しののめ)ちゃん? ごきげんよう! お店に直接電話なんて、なぁに?」
 アタシは店の支度部屋兼事務室で東雲綜合警備保障の代表取締役社長こと外星系人シムーちゃんからの電話を受けていた。

(オゼンに繋ぎをつけてもらいたい。聞きたいことがある)

 オゼンに? 一体何事かしら……。
「まぁ、いいけど? いつどこで会うの?」
 固定電話の子機を顎と肩に挟んで、メモ用紙とボールペンを手に取る。

(律子さんに口利きしてもらうんだ。律子さんの店を使わせてもらうよ。内容が内容だけにVIPルームをおさえておいてくれ。時間は相手の都合でかまわない。こっちが合わせる。なるべく早く会いたい)

 硬い声の調子を崩さないってことは、きっと会社から掛けてるのね。ってことはシムーちゃんの仕事がらみで相談事があると見たわ。前回のハトの顛末と同じね。にしても、電波遮蔽仕様のVIPルームとは念の入ったことで……。

「あらそ。ありがとねン。オゼンを呼ぶとなると漏れなくアインもくっ付いてくると思うけど?」
(それは大丈夫。想定内だ。それと……律子さん、キミにも同席してもらいたいんだ)
「え? 私?」
(いささか、気になることがある。律子さんの知識と見解を拝聴したい)
「まぁ、私みたいなババァの知識が欲しいなんてどういうことなのかしら?」
(謙遜するな)
 笑いを含んだシムーちゃんの声。
(キミの知識量と人脈にはいつも助けられているんだ)
「あらぁ、お世辞でも嬉しいわ。じゃ、早速連絡とってみるわね」

 子機の通話を切ると、着物の合わせの間から個人持ちのスマホを取り出す。多分、今日辺りはこっちに下りてるはずよね。電話帳から該当番号を選んで呼び出し音に耳を傾けた。
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