夜間飛行(パイ目線)

文字数 902文字

「はいはい、オゼンも人見知りはそれくらいにしなさい」

 アタシは手を叩いて張り詰めていた場の空気を緩めた。最初からこの場にいたのだけど、今まで空気みたいに様子を見てたのよ。オゼンってばホントに初対面には愛想無しなんだから。手振りでオゼンに座るように促す。

「それだけで呼んだわけじゃないわよ。誰がソレを狙っているのか、なんで狙うのかっていうヒントが解ればっていうのもアンタに訊こうと思ってたの」

 オゼンは僅かに眉間に皺を寄せた。アインに袖を引かれ、仕方なく座る。
「オレが付き合ってた連中は、そんな量産できるものに興味はねぇよ」
 不貞腐れるようにそっぽを向いて答えるオゼン。

 アインは小さく溜息を付いてから、オゼンの体越しにこちらを覗き込むようにして身を乗り出した。
「高等生物の仕業じゃないと最初から決めつけてるようだけど、それは何故?」

「盗んだとしても、こういったものは金にならん。そうそう買い手がつかないからな」
 シムーちゃんがソファに背を預けて答える。

「そうねー……考えられるとすれば『付加価値』かしら」
 アタシは思いついたことを口にしてみた。
「外星系人なら価値を見出せる何かがくっ付いているのかも? 直接見たわけじゃないから判らないけどね」

「私もだ……」

 シムーちゃん、アナタもなの?
 皆、しらけた視線をシムーちゃんに向けた。

「かといって、その付加価値が何なのか調査しようにも他所の国の至宝だからなぁ」
 ポリポリと頭を掻いているシムーちゃん。

 アインが黒目がちの瞳をキョロリと動かした。
「オレ等、その企画展を見に行く予定なんです。フォーカス使ってスキャンしてみますよ。天然ものなら多分それまで。何か人為的に操作されているものなら、何らかの情報を引き出すことができるでしょう?」 

「そうねぇ。まずは一般客に紛れて様子を窺うしかないわねぇ」
 アタシは顎に手を当ててアインに同意した。

 その時、シムーちゃんが「思い出した」と手を打った。
「そのダイヤの原石には『神が天から下賜たもうたもの』という意味深な曰くが付いているんだ!」

「それ、早く言えよ」
 あらまー、オゼンったら、シムーちゃんをギロリと睨みつけたわ。
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