第7話

文字数 646文字

一緒に暮らして二年、わたしたちはそれぞれ仕事も変えて、一台の車で一緒に通勤してた。
まずあのひとの工場へ行って、あのひと降ろしたらわたしは職場へ。
2時間くらい時間潰してからお仕事。
あのひとは少し残業してから、歩いてわたしの職場に来て、わたしのお仕事が終わるの待ってた。
わたしたちがふたりきりの時、一台の車をふたりで使う不便さだって、ずっと一緒に居る為の理由だったんだ。
ある仕事帰りの夜道、道路の真ん中、ヘッドライトに黒い何かが浮かんだ。
「ゴミかな?」
車を停めると、それはちいさな黒猫。
車に轢かれて瀕死だった。
あのひと、そっと抱き上げて、ふたり必死に動物病院を探した。
やっとの事で受け入れてくれる病院を探して、飼い主いないと治療出来ないって言われたから飼い主になって、手術。
一週間くらい生死の境をさまよった仔猫ちゃんは、無事にわたしたちのアパートにやって来た。
その間、ずっと気が気じゃないあのひとの優しさがすきだったけど、わたしにはひとつ心配事があったわ。
それは、やっぱり的中しちゃった。
臆病で、足を怪我したちいさな黒猫。
あのひとは、優しかった。
猫っ可愛がりとは、この事。
もちろんわたしもかわいがったけど、先に居た白い猫ちゃんは、健康だし、おっきいし、おんなじにはかわいがってもらえなかった。
嫉妬しちゃった。
わたしだって、猫なの。
だから、言ってやったの。
「猫にたいする異常な愛情」って。
わたしがあのひとのたった一匹の猫ちゃんで居られた日々は、そうやって終わった。

それから一年、わたしは妊娠したの。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み