第4話

文字数 505文字

あのひと、お金がないんだって。
わたしたち、暇さえあればチャットしてたから、あのひとケータイ代が払えなくなっちゃった。
会いもしないで付き合う事を決めて、初めてのわたしへの用事が、「12万円振り込んでくれないか?」。
あのひとが詐欺師だったら、騙し取られたかも。
でも、少しもそんな事思わず、すぐに振り込んだ。
だって、あのひと、口がうまいわけでもなく、調子良いだけじゃなく、ただただ、正直なだけだったから。
あのひとが嘘をつくなんて。
あのひとが人を騙すなんて。
今でも思えない。
わたしが逢いに行って、一緒に住む約束をして、あのひとのケータイがダメになって、文通と毎日一回の電話。
その最後の、「あいしてる」が、わたしを猫にしてくれた。
どうしたってなれなかった猫。
12万円でなれるなら、安いもの。
あのひと、すっかり恩に着て、「絶対幸せにするから」と言ってる。
拾われちゃった。
わたしはいろんな事をほっぽらかして、あのひとのもとへ。
遠く離れた、あのひとのところへ。
そしたら、ずっと一緒に、たくさん撫でてもらって、くっついて眠るんだ。
そんな風に考えて、幸せだった。
春までにいろんな事片付けて、そっちへ行くよ。

待っててね、ご主人さま!
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