第5話

文字数 371文字

 父親が透明な鉱石が複雑な屈折で光を入り組ませる高い壁を這い登りはじめると、魔子は彼のことは打ち捨てて、単独行動を採用した。
 というのも、彼女は父親の有用性を「乗り物」としてのみ認知していたからだ。彼の能力を過小評価していた。

 そこで彼女は門にむかって歩をすすめ、門衛に来意を告げた。
 しかしその門衛はただのマネキンだったので、魔子はバカをみたわけである。彼女にとっては、生活の中にムダが生じることは悪い予兆だった。
 頭上を見上げると彼女の父親ははるか頭上、おそらくは30メートルは壁を登ったものらしく、落下すれば死を免れない位置にいた。
 彼女の背後に爆音を轟かせてランボルギーニが疾走して来、門に激突するかと彼女に思われたその刹那だけ門扉がひらき閉じた。
 なるほど、門は通行の際には如才なく開閉する仕組みというわけだ。
 魔子は門をとおった。
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