第2話

文字数 306文字

 アカギレしたかかとのように、ひびわれた体のあちこちを剥落させながら、彼は巡査に倒れかかった。
「ぼくがAP3-265FC2だ」そう云って巡査を仰ぎ見て彼の胸元に没しながら、「2件の殺人、計9人の殺人に関与したが爽快である。我が死は爽快にして善である」と云って瞑目した男は花粉となって滅した。

 巡査はその花粉を複数のコンビニレシートに内包し、上司には何も伝えずにその日の交番夜勤を終えた。
 恋人の暮らす2Kの賃貸マンションに行き、彼女の出勤前に果たす日課たるセックスをし、気まぐれにレシート1枚に内包された分の花粉をひろげて彼女の顔に、彼女の目に侵入させた。
 そして巡査は疲れから、蝶に手をとられたように入眠した。
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