第4話

文字数 1,408文字

 高校生になってもリカは中学同様、テニスを続けた。そして俺もサッカーをやめなかった。お互い、中学三年間、夢中でやってきたことを、高校生になったからハイ終わりーーということにはできなかった。

 毎日、部活で忙しくてお互い二人の時間をとることができなくなっていった。進路決定の時期になるとますます会う機会が減り、とうとうリカの方から昨日、別れたいといってきた。
 正直、俺も付き合い始めた頃の熱い気持ちは消えていた。嫌いじゃないーーだけど夢中になれない……そんなモヤモヤした感情だった。

 今日は最後のデートだ。

 初めてのデートの時と同じ、ショップナインに朝9時集合。
 俺はあの日、リカと選んだ服を着てきた。リカも俺が選んだお気に入りの服を着てきてくれた。
「お待たせー。今日は、行きたいところがあるんだ」
「そうなんだ……」
 俺たちは、予約した3号室に入った。リカは座ると早速リモコンを操作しだした。
 俺は特に決めていなかったので最近の人気スポットを検索し流し見していた。するとリカが突然話しかけてきた。
「ねぇ、来週、高校の卒業式があるの。着ていく服をフミヤに選んでほしいの」
 リカは、バーチャルショップで今まで行ったことがないようなちょっとおしゃれな店内にいた。たくさんの色とりどりの服が並んでいた。
「ちょっと待って。俺もそこに行くから」
 フミヤは急いで同じショップへ移動した。そしてたくさんの服のなかから、淡いブルーのワンピースを選んだ。
「これが一番リカらしいと思う」
「ありがとう。じゃあ、それにする」
 リカはカゴに入れあっさりと購入した。
「えっ、見に行かなくていいの?」
「うん。実はね、先週、ショップへ行って試着したんだ。私は3点選んできたの。もし、フミヤが悩んだ3点以外の服をチョイスしたら、正直に話して決めるつもりでいたのよ。でも、フミヤが選んでくれたのが、私のお気に入りの中の一つだったから迷わなかったってわけ」
「なんだ、そういうことだったのか……高そうな服なのに、実際に見に行かなくって大丈夫なのか……ってちょっと驚いたよ」
「へへっ……ごめんね」
「俺、リカのそういうとこ、ちょっと寂しかったんだ。いつも俺に気を使ってさ、今だから聞いちゃうけど、俺に話してくれていないこと、いっぱいあんだろ。最初はさ、幼馴染とはいえ、知らないことがいっぱいあるから、お互いおっかなびっくりみたいな雰囲気はあったよな。でも、リカは一年経っても二年経っても距離を縮めてくれなかった。最後のほうは毎日、連絡しなくなって知らないリカが増えていった。俺、今でも後悔してることいっぱいあるんだ……」
「フミヤ、ごめんね……私はフミヤと付き合ってるとき楽しかったよ。いっぱいいろんなとこ行ったよね。でもやりたいことがありすぎてフミヤだけを選ぶことはできなかったーーこれから先、未来ねーーきっとお互いいろんなことが起きると思う。辛いこととかね……その時は、フミヤとの時間を思い出して前に進んで行こうと思う。もしかしたらまた、頼ってしまうかもしれない……でも、前に進みたいの。後ろ向きになるんじゃなくってーー」
「そうだね、俺も今はそう思うよ。俺たちの未来にはまだまだ楽しいことがたくさん待ってるよな」
「うん……わかってくれてありがとう。じゃ、ここで最後にしよう」
「うん」
「フミヤ、私、先に出るね。ありがとう……」
 そう言ってリカは静かに退室していった。
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