第1話

文字数 599文字

 人生初の彼女ができた。

 先週、中学校の卒業式があった。部活で青春を謳歌した。そんな学生生活に悔いはない……と言いたいところだったが、卒業式当日、しかも別れの時が近づいてきて俺は気持ちが抑えきれなくなってしまった。
 三年間、密かに思いを寄せていたA組のリカ。
(どうせ違う高校に進学するんだ。振られたとしても次の日から会わなくて済む。傷は浅い……)
 卒業式の日に告白するなんて、我ながら実に賢いーーいやズルい人生の選択をした。

 教室で最後のホームルームの後、急いで廊下に出た。A組のホームルームはまだ終わっていなかった。フーッと呼吸を整える間もなく、教室から生徒が流れ出てきた。リカとは幼馴染だから、周りからも注目されない。
「リカ、ちょっと話あるんだけど今いい?」
「なに?……あっ、サキ、下駄箱で待ってて。すぐに行くから」
 廊下の隅に呼び出して告った。
「リカ、俺、ずっとリカのこと好きだったんだ。別々の高校いっちゃうけど付き合ってくれない?」
「えっ、このタイミングでそれ言う?……まぁ、いっか。私もフミヤのこと気になってたから。お互い、部活ばっかりだったもんね」
「えっ、ほんと?えっ、OKもらえると思ってなかったな……えっ、どうしよ」
「自分から告っておいて、どうしよはないでしょ。じゃあ、友達待たせてるから……とりあえずライン交換しよ」
「あぁ、そうだね」

 ということで卒業式の日が交際記念日となった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み