8 技術的政策の分類図

文字数 1,208文字




科学・技術と制度・政策には、
経済・社会活動に働きかける際の
直接・間接・自助・互助という経路(ルート)の違いに応じて、
それぞれ4つの種類がありました。

技術と政策の互助ルートのうち、
政策側の技術的政策はさらに、
技術のどのルートを助けるかによって、
3つのルートに分けられます。


(1)社会工学的政策……共同支援ルート

画期技術を助けるルートです。

資源・環境や都市・交通、
防犯・防災といった技術的政策の中で、
民間団体や市民の協力を促すための、
政策です。

防災団体支援や建築規制・交通規則、
ごみ出しルールの周知など、
社会工学的な組織・規制・啓発技術を
用いる政策です。

経済・社会活動全体を大きく変える、
主力技術の悪用・誤用・副作用を防ぎ、
活用するために、
自らもまた広く経済・社会活動の中で
共に働き支援する、という技術です。

豊かな工業社会では、
大災害時に消防署だけでは対応できない等、
皆で協力し合わないと、街の安全・衛生や
利便・快適性が損なわれてしまいます。

便利な情報社会では、
特殊詐欺対策に銀行の協力も必要です。

名前の印象とは異なり、
政策実施を助ける社会工学の力を借りて、
実は大きな画期技術の活用を
助ける政策といえます。


(2)社会基盤(インフラ)政策……部分支援ルート

実現技術を助けるルートです。

画期技術を物的資源に具現化する、
建設・輸送・電気・通信技術といった
実現技術の健全性を保つため、
一般的な経済・社会活動からは得にくい支援を
提供する政策です。

例えば、自動車や家電・パソコンなら
民間市場が供給できますが、
公共施設や交通・動力(エネルギー)・通信網など、
社会基盤(インフラストラクチャー)の建設には
公的な出資や調整が必要なので、
そうした主に大規模な、
物的資源の整備を行う政策となります。


(3)研究・開発政策……特注支援ルート

研究・開発技術を助けるルートです。

科学・技術自体を発展させる
研究・開発技術に対して、
その健全さを保つため
利害を調整する政策です。

広い意味では経済・社会活動の一部ですが、
先行投資、情報の守秘・共有、
社会的影響への配慮などの必要性がある、
研究・開発事業の特殊性に応じ、
いわば特別注文(カスタムメイド)の支援を提供する政策です。

英国が産業革命、米国が情報革命に
成功した大きな理由に、
民間組織も含めた研究・開発政策の
努力があげられます。

もっとも、以上は理論的な分類であり、
現実的には重なることもあります。
様々な技術や政策には、重なり合い、
働きかけ合う部分も多いからです。

校舎の建設は、教育政策と共に
防災社会基盤(インフラ)政策にもなり得ます。
新技術による通信網の建設支援は、
研究・開発政策にも社会基盤(インフラ)政策にもなります。
企業による先端技術開発への支援は、
研究・開発政策と共に産業政策にもなります。

同じ福祉法人や財務諸表が、
組織・会計技術の成果であると共に、
経済・社会政策の手法である、
といえるような場合もあります。

そうした重なりを考えるのも面白く、
さらなる政策の立案や連携に
役立ちうるのではないかと思います。
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