2 歴史学的説明図

文字数 1,430文字




文明の六要素はそれら全てが、
互いに影響を及ぼし合う関係にあります。

しかし、長期的にみると、
技術が進めば社会が変わり、
社会が変われば政策も変わり、
その政策がさらに次の技術開発を促すという
螺旋的上昇の循環(スパイラル・アップ・サイクル)により、
文明が発展していきます。


(1)変化の順序

ここでまず重要な点として、
個人の活動と違って文明活動では、
決定(政策)と行動(社会活動)の順番が
逆になります。

なぜなら、技術を用いて
人々が様々な社会活動を営む中から、
試行錯誤(しこうさくご)により、利害調整のための
制度・政策が確立されていくからです。

自動車が普及しないうちから、
完全な自動車交通法規は作れません。
ただその時間差(タイムラグ)をできるだけ、
縮めることが重要なのだと思います。

技術や政策の社会的・長期的な流れは、
多くの人々の活動の積み重ねによるので、
個人の個々的な認識や決定と同一ではなく、
総合的な見識や人格の形成に近いといえます。

科学・技術や制度・政策においては、
法則・技術や理論、理念・法規や制度という、
一般的な認識・決定やその体系が重視される、
というのもその表れだと思います。


(2)変化の内容

次に、文明発展の具体的な過程(プロセス)を見ると、
生産・輸送・通信や軍事のための
科学・技術が発達すれば、
経済・社会活動が拡大・省力化と共に
複雑・加速化します。

すると利害を調整するため、
新たな制度・政策が必要となり、
それらは以前のものより高度化し、
巨大化と同時に分権化します。

政策の巨大化と分権化というのは、
一見矛盾するように見えます。

でもそれは、必要とあれば大勢が動くが、
それにあたっては、より多くの人々が
決定や改善に関わるようになっていく、
ということです。

歴史上、国家の統合が進み、
国際協調主義や全球統治(グローバルガバナンス)
理念が生まれる一方で、
政治的民主化や経済の自由化、地方分権、
様々な監査制度、人権保障が
発達してきたのは、その表れでしょう。


(3)変化の循環(サイクル)

また他方で政策は、新たな科学・技術の
研究・開発も促します。

ある技術水準で利害を調整する政策が
社会における利害調整を極めると、
その限界を突破するために、
新たな技術が求められるからです。

技術の側から見ても、その開発や普及には
政策的な支援を要します。

巨大科学(ビッグ・サイエンス)と言われるような
現代の科学・技術では、
その研究・開発に多くの資材や
人材、資金が必要となるからです。

アメリカが情報革命といわれる
社会変革に成功したのは、
アポロ計画や核戦争対策における
電算組織(コンピュータシステム)の、
国家的な開発努力によるところが大きい、
と言われます。


(4)変化の必要条件

しかし、前の図でも述べたように、
技術は物的資源に具現化されないと
社会を豊かにできません。

歴史的に見ますと、
第二次大戦時の日本の大きな敗因のひとつ
(資源輸入の途絶による燃料・物資不足)は
これにあたります。

また、政策は人的資源により実現されないと、
社会を健全に保ち続けられません。

民主的なワイマール憲法のもとで
独裁者ヒトラーが生まれた原因
(民度[社会的知識や政治的成熟度]の不足)
は、これにあたりましょう。

さらに、政策が新技術を開発・普及する際は、
自然・社会環境が制約・促進要因となります。

英国が産業革命で先駆けた理由
(鉄鉱、石炭、水資源、労働力、
資本や市場の存在)は、
これにより説明できます。

しかし、これまでも先人が行ってきたように、
失敗であれ成功であれ、
過去の経験から文明の潮流(トレンド)を読み取り、
現在の状況分析と合わせて、
未来の活動に活かしていければ、
必ずや社会の繁栄に役立つと思います。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み