1 文明要因図

文字数 1,597文字



(1) 文明の定義

私達は今、様々な社会課題に直面していますが、
その解決には、私達がこれまで何によって
栄えてきたかを知ることが、有益だと思います。
人類は、文明によって現在の繁栄を得ました。

文明の最も簡単(シンプル)な定義は、
〝高度な技術を伴う知的生命活動の様式〟です。

知的生命活動とは、
脳神経系のように発達した情報処理器官を用い、
環境の違いや変化に応じて
自らの活動を制御することにより、
よりよくより良く生きられる生命活動です。

知性とは、抽象的な思考能力により、
『ああいう時はああなる』(法則)、
『こうすればこうできる』(技術)といった、
物事の間の一般的な因果関係を
発見・活用できる能力です。

まとめて分かりやすく言いますと、
知的生命活動とは頭を使い、
物事の原因に働きかけることで、
生存しやすい結果を得る生命活動です。


(2)三つの文明活動

文明の特徴としては農耕、土木や文字などの技術、
都市の形成、人口の増大、独自の文化、
政治を含めた社会的分業などが()げられますが
それらのうちで技術以外のものは、
技術が必然的にもたらすものといえます。

例えば、農耕技術により生活が豊かになり、
都市ができて大勢の人々が
商工業や文化活動を営むようになると、
それらを社会全体で効率的に行えるよう、
行政も含め様々な活動が分業化します。

そこで、様々な文明活動を考えたい時は、
まずは科学・技術を出発点に、
それらを知的生命活動の順序に従って
分類していけば、合理的・体系的に、
分かりやすく理解できると思います。

知的活動の過程は、
『どうなっているか知る』(認識)、
『どうすべきか決める』(決定)、
『その通りにする』(行動)という、
三段階に分けられます。

それに従うと文明活動もまた、
科学・技術(社会的な事実認識)、
制度・政策(社会的な意思決定)、
経済・社会活動(社会的な現実行動)という、
三種類に分けられます。
(以後は技術、政策、社会活動と略する
ことがあります。)

この分類は教育における知情意体、知徳体や、
経営のマネジメント(PDCA)サイクル、
軍事におけるOODA(ウーダ)ループ、
販売におけるAIDOMA(アイドマ)の法則など、
知的活動の段階による個人や組織の活動の
分析手法を、社会全体に当てはめたものです。


(3)三つの文明条件

〝科学・技術〟が進むと、
〝経済・社会活動〟が豊かになり、
同時に拡大・複雑・加速化します。

そこで人々の利害を調整し、
次の技術を開発するためにも、
〝制度・政策〟が必要になります。

しかし技術は、農地や建物のような、
〝物的資源〟に具現化されないと
社会を豊かにできません。

政策もまた、健康で教育を受けた、
〝人的資源〟により実現されないと
社会を健全に保てません。

さらに、政策が新技術の導入を行う時は、
資源や市場など〝自然・社会環境〟が、
促進または制約条件として働きます。

これらは文明活動に影響を及ぼす、
内外の環境条件です。


(4)『文明の星』

以上のような3つの文明活動要因と
3つの内外環境要因、合計6つの文明要素を、
〝ダビデの星(The Star of David)〟や
籠目紋(かごめもん)〟といわれる、
六芒星(ろくぼうせい)(✡)の形に並べた図から、
文明について考えることができます。

私はこの考え方(仮説)を、
『文明の星』理論と名付けました。

私達は今、文明の転換期を迎えています。
生活水準が向上し、世界が一体化する一方、
地球環境の限界や社会活動の複雑化、
経年・経代的な健康水準の低下、
政策の国際化や民主化の必要性など、
多くの課題も生じています。

そうした課題を解決できる新技術は
すでに現れつつありますが、
新たな技術を活用できる政策も
求められています。

私達が〝文明〟という概念(コンセプト)により、
広い視点から、筋道を立てて、バランス良く
(包括的・分析的・総合的に)、
文明活動を考えてゆくことができれば、
それはより良い技術や政策の考案につながり、
人類社会のさらなる発展に
役立つのではないかと思います。
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